『バフェットからの手紙』(ローレンス・A・カニンガム/パンローリング)
バフェットは、師匠であるベンジャミン・グレアム(『賢明なる投資家』の著者)と同じように自らの投資成功の秘訣を惜しみなく公開していますが、相変わらずほとんどの投資家がベンチマークとなる市場指数(日本では主にTOPIX)を下回っている状況は皮肉なものです。投資の世界には、投資を失敗させる構造的な要因が存在するのでしょう。
では、2015年度版の「株主への手紙」から私が興味深いと思った部分を紹介していきましょう。
自社株買いの基準
『ROEが奪う競争力 ―「ファイナンス理論」の誤解が経営を壊す』(手島直樹/日本経済新聞出版社)
・成長企業のフリ:EPS(一株当たりの当期純利益)を増大させる
EPSは当期純利益を発行済み株式総数で割ることによって算出されます。ですので、自社株買いにより発行済み株式総数を減少させることにより、当期純利益が不変であってもEPSは増大することになります。もちろん、このようにしてEPSを増大させたところで企業価値が創造されることはありませんが、EPSは投資家が重視する指標であることに加えて、業績連動型の報酬がEPS目標の実現によって決定されることが多く、特に米国ではEPSが非常に重視されています。
実際、積極的な自社株買いによりEPS成長率が当期純利益の成長率を大幅に上回るケースが米国では多く見られます。日本においても、コーポレートガバナンス改革の一環として、業績連動型の報酬制度の導入が推奨されており、米国と同様にEPSが報酬の基準になることになれば、EPS増大を目的とする自社株買いの実施が増加することになるでしょう。
『ROEが奪う競争力‐「ファイナンス理論」の誤解が経営を壊す 』 投資家を喜ばせる経営が価値創造を妨げる!? ROE目標を8%に設定すると翌日キャッシュフローは増えますか? 株主資本コストを意識すると翌日キャッシュフローは増えますか? 1日に5社の機関投資家と対話をすれば翌日キャッシュフローは増えますか? 社外取締役が複数になれば翌日キャッシュフローは増えますか?
