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徳岡晃一郎「世代を超えたイノベーションのために」

著名な経営コンサル、実は経営コンサルは「的外れで役立たず」だったと告白

文=徳岡晃一郎/経営コンサルタント、多摩大学大学院研究科長
著名な経営コンサル、実は経営コンサルは「的外れで役立たず」だったと告白の画像1『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です』(カレン・フェラン/大和書房)

 今年の5月の連休は、例年になくゆっくりと過ごすことができた。インプットに時間を使えたので、ランダムに購入したり、すでに入手してあった本を数冊まとめて読むことができた。そのなかでおもしろいものを紹介したい。そして、それらがまた面白い現象を引き起こしたことを紹介したい。

 まず『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です』(大和書房)という奇妙なタイトルの本だが、原著のタイトルもそのままだ。カレン・フェランというアメリカのコンサルタントが、「科学的な」分析で経営コンサルや人事コンサルをしてきたが、どれもこれも本人がコンサルを辞めて、企業側のインハウスの経営幹部になった時にまったく見当外れであったことを述懐している。

 そして、真に重要なことは、そのような論理分析的アプローチによる「ソリューション」を当てはめることではなく、リーダーが絶対に負けないという強い意志と情熱をもって、チームの意欲を引き出し、良い関係性をつくる人間力を発揮することだとしている。自分の頭で本質をしっかり考え抜く信念こそ重要だ、というわけだ。なかでも成果主義の人事制度には徹底的に批判的で、まさに私の主張するMBB(思いのマネジメント)の方向を提唱している。

 続いて、『マインドセット 「やればできる!」の研究』(草思社)という何やら松岡修造チックなタイトルだが、キャロル・S・ドゥエックというアメリカの社会心理学、発達心理学の世界的権威の著作だ。ここでは、頭がいいと褒めることと、よくがんばったねと褒めることの違い(わかりますか?)を説明してくれる。

 すなわち前者の褒め方で自分の能力を中心に置くようになると、人はできるできないを気にするようになり、その結果、恥をかかないよう冒険しなくなってしまう(硬直マインドセット)。が、後者の褒め方をされ自分の努力を中心に考えるように育つと、人はがんばったからできた、もっとがんばればまだやれる、できなかったのは自分の努力のせいだと前向きになれる(しなやかマインドセット)というわけだ。このマインドセット(心の持ちよう)ですべてが変わってくる。

 しかし、これはしょせん「心の持ちよう」次第なので、変えられるのである。すなわち人事評価においても、結果を評価するばかりではなく、プロセスや努力、成長や学習を評価しなくてはならないというわけだ。これもMBBのど真ん中だ。

真のリーダーの役割

 3冊目は『さあ、才能に目覚めよう』(日本経済新聞出版社/マーカス・バッキンガムほか)で、人は強みによって磨かれる、強みを自覚して磨くことが自分らしい生き方になると説く。弱みを鍛えるのはディザスタリカバリ(障害や困難への備え)にはなるが、そこから偉大な成果は出てこない。これはドラッカーも言っている。しかし現実には、人事評価も社員教育もすべては弱みを克服することに向けられているというわけだ。

 本書ではウェブと連動したテストを受けられるようになっており、私の強みは「達成欲」「内省」「学習欲」「収集心」「親密性」と診断された。強みを自覚し、しなやかマインドセットがあれば、人はどんどんと吸収し、成功体験を積み、ますます意欲を持てるようになる。そうすればコンサルに頼らずに自分の頭で考えられるようになる。何と3冊の主張が勝手に自分の頭のなかでつながってきた! しかもMBBとパラレルだ。

 4冊目は『シンクロニシティ』(英治出版/ジョセフ・ジャウォーキー著)である。これはリーダーの真のありようとは何かを突き詰めた著者の自叙伝的な本で読み応えがあった。辣腕弁護士にして事業家でアストンマーチンに乗っていた成功者が、突如一切を捨てて、グローバル・リーダーシップ・イニシアチブという、世界をよりよくするための真のリーダー育成に身を捧げるようになる旅路の物語だ。

 アメリカのリーダーは金儲けや自分の成功ばかり考えているがそれではまずい。人間社会のことを真剣に考えれば、私たちは「内蔵秩序」として、人間らしく生きたいという思いを皆共有している。リーダーは、そういう自分にも存在する根源的な思いに向き合って生きることで、周囲の人も感化し、つながりあうことで、みながよりよい世界の創造へ向けて歩みだすきっかけになることができる。それがリーダーの役割だ。そこではじめて、みながつながったと感じられる現象、すなわちシンクロニシティが組織内、あるいは組織を超えて起こるのだ。活性化の真骨頂だと思う。

 これはまさに私がMBBを発展させた「イノベーターシップ」で主張したかった、イノベーションリーダーのあり方そのものであった。よりよい未来を創造するという大きな目的(まさに四方よしのイノベーションであり、世代を超える志でもある)を持つことがこれからの世界を引っ張るビジネスリーダーの矜持でなければならない。

 このようにこの4冊だけでも、みなつながっている。まさに不思議なことにシンクロニシティが自分の中で起きた連休だったのだ。このような世界観をもって、日本を元気にするリーダーシップのあり方、人事のあり方をこれからも提唱していきたい。
(文=徳岡晃一郎/経営コンサルタント、多摩大学大学院研究科長)

徳岡晃一郎/経営コンサルタント、多摩大学大学院研究科長

徳岡晃一郎/経営コンサルタント、多摩大学大学院研究科長

ライフシフトCEO
多摩大学大学院教授、研究科長、フライシュマンヒラード・ジャパン シニア・ヴァイス・プレジデント、多摩大学社会的投資研究所所長

1957年生まれ。東京大学教養学部卒業。オックスフォード大学経営学修士。日産自動車人事部、欧州日産を経て、99年フライシュマン・ヒラード・ジャパンに入社。人事およびコミュニケーション、企業文化、リーダーシップなどに関するコンサルティング・研修に従事。2014年より多摩大学大学院研究科長、2017年ライフシフトを設立、CEOに就任。主な著書に『MBB:「思い」のマネジメント』(共著、東洋経済新報社)『未来を構想し、現実を変えていく イノベーターシップ』(東洋経済新報社)、『人事異動』(新潮社)、『ミドルの対話型勉強法』(ダイヤモンド社)、『人工知能Xビッグデータが「人事」を変える』(共著、朝日新聞出版社)、『しがらみ経営』(共著、日本経済新聞出版社)など他多数。
株式会社ライフシフト

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