–営業利益の落ち込みによって、日産はタクシー事業などの不採算事業をカットせざるを得なくなったわけですね。トヨタには、バブル崩壊の影響はなかったのでしょうか。

呉尾 トヨタは海外展開に力を注ぐグローバル企業で、バブル経済下で日本中が浮かれていた時も、不動産投資などの余計なことは行わなかった。そのため、バブル崩壊のダメージが少なかったので、日産が撤退したタクシー事業という穴に「儲けはないが、せっかくだから」と滑り込んだのでしょう。これが、今日まで続く「トヨタによるタクシー事業の独占」の構図です。

プリウスのタクシーは乗り心地が最悪?

–そのなかで、プリウスのタクシー車両が増えているのはなぜでしょうか。一説には、トヨタが4年前に発表した「LPガスを燃料とするタクシー専用車の生産を2017年に中止する」という事業展開が理由とされていますが、エコカーはプリウスに限らず、ほかの自動車メーカーにもたくさんあります。

呉尾 車両をLPガス燃料車から切り替えていくにあたり、各タクシー会社が燃費のいいエコカーに注目するのは当然です。プリウスは、そのエコカーの代表格ともいえる存在で、耐久性などの性能面でも他メーカーのものと比べて一日の長があります。また、プリウスが「エコカーにしては安っぽくない」ということも大きな理由でしょう。

 例えば、ホンダのフィットの場合、エンジン音は静かですが、内装がプラモデルのようなプラスチック製なので、加速すると「ポーン」と安っぽい共鳴音が鳴ります。これでは、タクシー車両に向いているとはいえません。

 一方、プリウスはコストを落とすところは落としていますが、内装などはしっかりつくってあるので、エコカーのわりに安っぽくありません。だから、富裕層を乗せてもそれほど違和感がない。

 タクシー会社にとって、エコカーを使うことは「我が社は環境に配慮しています」というPRにもなりますが、その「エコカーという選択肢」のなかでは、プリウスがもっとも無難なチョイスなのです。

–それでは、今後はコンフォートに代わってプリウスがタクシー車両の主流となっていくのでしょうか。

呉尾 現状はプリウスのタクシーが増えているとしても、その傾向が今後も続くとは限りません。プリウスがタクシー車両に選ばれる理由は、あくまで「ほかのエコカーに比べれば、ましだから」というだけです。

 例えば、エコカーにはバッテリーが搭載されていますが、プリウスでは後部座席の下に積まれています。そのため、どうしても着座位置が高くなり、コンフォートに比べると窮屈です。背もたれも変にピンと立っていて、あまり乗り心地が良くありません。こうした点は、タクシー車両として致命的といっていいでしょう。

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