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大西宏「コア・コンセプトのビジネス学」

「セブン&アイ鈴木前会長は流通の神様」のデタラメ…ヨーカ堂と百貨店は完全に失敗

文=大西宏/ビジネスラボ代表取締役

 しかし、ヨーカ堂の場合はドミナント戦略にこだわるあまりか、店舗が関東に偏りすぎ、出店競争では遅れをとってきました。ようやく、岡山の食品スーパー天満屋ストアとの資本提携や大阪のスーパー、万代(まんだい)との業務提携で関西進出にアクセルを踏む動きにでてきていますが、時すでに遅しかもしれません。

オムニ7ではヨーカ堂は救えない

 鈴木氏が「第二の創業」と位置づけ、ヨーカ堂や百貨店事業を進化させようというのがオムニチャネル事業です。専用の通販サイト「omni7(オムニセブン)」を立ち上げ、100社以上ある販売チャネルの商品を一元化し、各社の顧客情報も統合するということですが、かなり疑問符がつきます。

 なぜなら、いくら100社以上販売チャネルがあったとしても、アマゾンや楽天などの商品の集積度にはとてもかなうものではありません。ECでは、商品の集積度が決定的な鍵を握ります。むしろ自社の販売チャネルでの扱い商品というのは強みではなく制約となり、競争力を損ないかねません。セブン-イレブンでタブレットを使って購入するというのも、いまやショールーミングで店舗を利用して、スマートフォン(スマホ)で購入する時代には現実味がありません。

 実際、通販事業のノウハウを求めてニッセンを吸収しましたが、通販事業は惨憺たる結果です。同事業の15年2月期の売上高は1858億円で、16年2月期には2000億円の大台に乗せると意気込んでいたにもかかわらず、実際には14.6%減の1587億円にまで縮小し、逆に営業利益は75億円の赤字から85億円へと赤字が増えています。そしてオムニ7の戦略は、セブン−イレブンの店舗負担を増やし、店舗の不満に火をつけかねないのです。

ヨーカ堂はドイツのアルディになれるか

 GMSが圧倒的な品揃えと安さで成長してきた、つまり規模の経済と嗜好の多様化を成長の原理としていたのに対して、コンビニが画期的だったのは、限りのある店舗スペースと品揃えで、商品の回転率で稼ぐスピードの経済原理と、FCシステムによって店舗数を増やしていくことで成長してきました。

 このまったく異なる原理を持つビジネスモデルの両方を成功させるには、もしかすると「流通の神様」でなければどだい無理な芸当なのかもしれません。コンビニ・パラダイムにどっぷり浸かった鈴木氏がヨーカ堂や百貨店の経営の陣頭指揮をとることはむしろマイナスでした。それは業績という結果が示しているところです。