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航空経営研究所「航空業界の“眺め”」

ANA、「JAL越え」達成でナショナルフラッグに…「不公平な競争」30年の死闘、だが…

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 それから1年2カ月後の11年3月28日に更生手続が終了。驚くべきV字回復だった。翌12年9月19日東証一部に再上場し、企業再生支援機構は保有株すべてを売却。同機構、すなわち国はわずか2年半で3000億円ほどの売却益を得た。

 公的資金を投じて企業再生した例としては、かつてない高収益案件となった。日本航空は、立派に国家経済に貢献したともいえる。公平な企業評価が一目でわかる株式市場では、日本航空の時価総額が1兆3891億円(16年5月22日時点)となり、全日空の1兆1134億円を25%上回る。

 日本航空のリストラには、もうひとつ忘れてはならないことがある。リストラによって整理、自発退職したパイロット、客室乗務員、整備員、地上職などの日航社員たちが、12年から始まった日本の本格的LCC(格安航空会社)市場の立ち上げに貢献したことである。

いま求められる「協調」


 全日空は、日本航空に対する優遇措置についていまだに「不公平」だと言い続けているが、同社の主張には日本の国際航空体制がどうあるべきかという視点が欠落している。

 政府は訪日外国人(インバウンド)数を20年までに4000万人、30年には6000万人にする観光立国政策を掲げている。島国である日本は、海路か空路しかインバウンドの「足」はない。海路は15年にクルーズ船寄港の大幅増加で100万人を突破した。20年には500万人を目標としているものの、この数は6000万人の内のわずか10%未満。大量のインバウンドを海外から運んでくるのは、ほとんど空路である。

 しかし、日本国籍の航空会社全社の日本発着国際線便数シェアは25%にすぎず、諸外国に比べて極めて低い。たとえば、インバウンド旅客の約70%を構成する中・香・台・韓の4カ国/地域では、自国/地域の発着便における自国/地域の航空会社のシェアがいずれも50%を超える。

 また、世界の国際線航空会社の供給量ランキングで日本はひとり負けだ。急ピッチで国際線を拡大している全日空でさえ20位、1983年に国際線輸送量で世界一を誇った日本航空に至っては26位とまったく振るわない(CAPA データより)。

 今、日本航空と全日空は国内でいがみ合っている場合ではなく、国際競争のサバイバルにもっと目を向けて、インバウンド6000万人を達成すべく自国の国際路線網を拡大し、観光立国政策に貢献していくべきときなのではないか。両社はもっと協力し合って日本の航空輸送業の発展に貢献すべきである。
(文=牛場春夫/航空経営研究所副所長)

【編注1】座席キロ当たりの旅客営業費用の算定に当たっては、貨物・郵便とその他の営業収入を、これらのセグメントの収支が均衡しているとして、営業費用から全額控除して計算。両社の収支比較については、航空経営研究所のHPを参照

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