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高井尚之が読み解く“人気商品”の舞台裏

ミシンのブラザー、驚異的「ダーウィン進化論」経営!主力事業をコロコロ替え百年成長持続

文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

–大型M&Aに踏み切った理由を教えてください。

小池 事業環境の変化に対応するには、既存の事業だけでは成長できないと判断し、昨年ドミノ社のM&Aを行ったのです。

 ドミノ社はペットボトルや缶、食品の包装に賞味期限やロット番号などを刻印する産業用プリンターに強く、ブラザーの消費者用プリンターとは事業内容がほとんど重複しません。産業用プリンターは今後も年5~6%成長する市場といわれており、ここに本格的に参入することにしたのです。

 私は長年米国に駐在していたので、昔からドミノ社は知っていました。実は、近年は社内の買収候補として名前も上がっていたのです。それが証券会社から買収案件として持ち込まれるようになり、「ドミノ社も独立系での継続は難しいと判断したのか」と感じました。そこで先方の事業内容を精査した上で名乗りを上げたのです。

この買収案件で最初にドミノ社と会ったのは14年の11月で、その後も順調に話が進んで15年2月には合意に達し、同年3月には買収手続きについて外部に公表。6月に買収完了を発表しました。

ミシンのブラザー、驚異的「ダーウィン進化論」経営!主力事業をコロコロ替え百年成長持続の画像4ドミノ社の社屋

–約1900億円という買収金額が高いともいわれました。その金額の妥当性については、どのようにお考えですか。また、1年たってドミノ社とのシナジー効果はどうなっていますか。

小池 確かに、メディアからも株式市場からも「高い」という声がありました。もともとドミノ社は配当性向が強い会社で、内部留保もさほど多くありません。ポンドが強い時期でもあり、企業買収での目安となる指標、EV/EBITDA倍率では16~17倍でした。

 この数値は、通常もう少し低いほうが望ましいといわれ、取締役会でも「少し高いのではないか」という意見が出ました。ただ、こうした案件はタイミングも大切です。のれんの減損リスクも認識していましたが、「ここでやらないと会社の将来も見えない」という危機感もあり、思い切って決断しました。

 ドミノ社やその子会社の業績は安定していますが、連結子会社化によるのれん償却費や無形固定資産の償却費の負担も抱えました。一方で、私は社長就任以来、内部留保を約1000億円増やしてきており、ブラザーの財務体質も強固だったので決断できたのです。

 買収後1年を経て、現時点での私の率直な感想は、予想を大幅に上回るようなサプライズもないが、安定した売り上げと利益を生み出す事業だと感じています。事業計画として掲げた数字をその通りに達成しますから、ブラザーグループに迎え入れてよかったと思います。

ミシンのブラザー、驚異的「ダーウィン進化論」経営!主力事業をコロコロ替え百年成長持続の画像5デジタル印刷機「N610i」

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、(株)日本実業出版社の編集者、花王(株)情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、大企業・中小企業の経営者や幹部の取材をし続ける。足で稼いだ企業事例の分析は、講演・セミナーでも好評を博す。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。これ以外に『なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?』(同)、『「解」は己の中にあり』(講談社)など、著書多数。

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