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中国に潰されていく…台湾の危機 中国の利益搾取に台湾国内の不満沸点、緊張状態か

構成=石丸かずみ/ノンフィクションライター
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–それに対して、中国の感情はどうなのでしょうか。

福島 蔡氏の妥協演説をもってしても、中国は不満を抱き、強く警戒しています。安倍晋三政権は蔡政権の誕生を好意的に受け止めていますし、日米が急速に台湾に近づいているからです。

 蔡政権の誕生で日台や米台の関係が変わるかもしれないなか、中国は2017年に中国共産党全国代表大会があり、その前後には内政が不安定化する可能性もあります。その時期、習政権が台湾に対して高圧的な態度に出るかもしれないという見方も、中国側から出ています。

中国に利益を吸い上げられていた台湾経済

–親中路線だった馬政権時代は、企業だけではなく、中国からの旅行者も増えたといわれています。

福島 確かに、前総統時代に台湾のGDP(国内総生産)は上昇しました。しかし、若い層を中心に中国経済の恩恵を実感していない人が多く、「GDPが上がっても、賃金は上がらなかった」という声も聞こえてきます。物価も上がり、食料品などは8年間で倍になった感覚です。

 旅行を例にするとわかりやすいのですが、中国人旅行者を中国の旅行会社が集めて、中国人ガイドが台湾を案内するのです。食事もホテルも中国資本のところに誘導するし、そのホテルの建設自体も中国企業と中国人労働者によるものだったりします。

 もちろん、台湾も恩恵を受けている部分がありますが、それよりは「産業がつぶされていく」という感覚のほうが大きいでしょう。また、「中国に経済を牛耳られると、言論の自由も圧迫されていく」と考える人も多く、中国経済の恩恵を直接的には感じづらくなっているのです。

 そのため、台湾の人たちは「ビジネスはビジネス、政治は政治」と割り切るドライな立ち位置です。中国に工場を持っているような大企業の社長ですら、総統選挙では「私は愛国者(台湾本土派)だから、蔡氏に入れた」という人がいます。台湾市場は小さいので、中国市場を視野に入れないとビジネスが立ち行かないのは事実だけれど、それでも中国に飲み込まれるのは嫌だ。こっちから打って出るのはいいけれど、中国が押し寄せてきて台湾が支配されるのは嫌だ、というわけです。

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