
創業者の伊藤雅俊氏と“カリスマ経営者”鈴木敏文氏の対立で揺れたセブン&アイ・ホールディングスの株主総会が5月26日に開催された。
人事議案への賛成率は井阪隆一社長が87.95%、創業家出身の伊藤順朗取締役執行役員が88.36%、鈴木氏の次男の鈴木康弘取締役執行役員が88.31%だった。セブン&アイに君臨してきた鈴木氏の、会長兼最高経営責任者(CEO)退任に大きな影響を及ぼした社外取締役の伊藤邦雄・一橋大学大学院特任教授は88.53%に達した。最終的に、すべての取締役の賛成率が9割を割った。お家騒動を喧嘩両成敗とみなす株主が少なからずいたということを物語っている。
セブン&アイは、伊藤家の資産管理会社である伊藤興業と雅俊氏が合わせて9.66%の株式を保有する筆頭株主。資本と経営を分離し、経営は鈴木氏が担ってきた。鈴木氏が井阪氏をセブン-イレブン・ジャパンの社長から解任しようとしたことに創業家が反対し、対立が激化。最終的に鈴木氏が経営トップを辞任し、井阪氏がセブン&アイの社長に昇格した。
伊藤家と鈴木氏との対立の根底にあったのは、鈴木敏文・康弘親子の世襲問題だった。「物言う株主」のサード・ポイントが批判したことで、上を下への大騒動に発展。創業家がカリスマ経営者を退陣に追い込んだのは周知の通りだ。
2015年はコーポレートガバナンス・コード(企業統治)元年といわれた。株主主権の導入で物言う株主たちが出番を迎えた。ターゲットになるのは、セブン&アイのように創業家が大株主で企業統治に難点のある企業だ。とりわけ世襲問題が狙われる。
セコムの次期トップは創業者の娘婿?
株主総会で株主が議案に賛否を投じる権利を議決権という。14年に定められた機関投資家の行動規範「日本版スチュワードシップ・コード」によって存在感を増したのが、機関投資家に議決権の賛否を推奨する議決権行使助言会社である。
米大手の議決権行使助言会社、インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)は、「セコムの首脳交代は不透明」との懸念を表明した。
セコムは5月11日の取締役会で前田修司会長と伊藤博社長を解職。後任社長に中山泰男常務が昇格した。4期連続で過去最高益を達成した2人のトップが首を切られた。
セコムは、3月に社外取締役を交えた「指名報酬委員会」(メンバー非公表)を設置。前田氏と伊藤氏の処遇を話し合ったが結論が出ず、最終的に取締役会で2人の解職を決めた。最高実力者である創業者の飯田亮最高顧問は解職に賛成した。ISSは、この手続きが「透明ではない」と苦言を呈した。