NEW
筈井利人「一刀両断エコノミクス」

タックス・ヘイヴン規制で、税当局の恣意的な徴税横行の恐れ…リベラル派のデタラメ主張

文=筈井利人/経済ジャーナリスト
【この記事のキーワード】

, ,


 これに対し税法学者の間では、税法のもうひとつの原則である「租税法律主義」を重視し、個別の規定によらない否認は認められないとする見解が通説となっている(増田英敏『リーガルマインド租税法』/成文堂)。租税法律主義とは、税金の賦課・徴収は議会の制定した法律によらなければならないという原則をいう。

 たとえば法人税法の場合、第132条に同族会社を使った税逃れは否認し、課税するという規定がある。税法学の通説では、このような個別の規定がない限り、明らかな租税回避でも課税してはならないということになる。

 今後タックス・ヘイヴンへの課税が強化される場合、それが法人税法や所得税法を改正し、個別の否認規定を追加する明確な形をとるのであれば、経済的な悪影響はともかく、法的な問題はない。しかし、現実にそのような正攻法の対応は考えにくい。

 タックス・ヘイヴンでの取引は複雑かつ多様で、しかも次々と新しい手法が考案される。いちいち国会の手続きを踏んで関係する税法を改正するとなると、大変な手間と時間が予想される。

 法律改正でなく、国税庁が出す通達で課税できれば、国会の手続きを踏む必要はない。しかし、これは「通達課税」と呼ばれ、租税法律主義に反する。本来ならあってはならない行為だが、徴税の現場では横行しているといわれる。政府がタックスヘイブン潰しの姿勢を強めれば、通達課税など税当局の恣意的な徴税が広がり、租税法律主義の形骸化が進むおそれが大きい。

 租税法律主義にはそれだけの重みがある。税法上の原則というだけでなく、近代憲法の大原則でもあるからだ。日本国憲法では第84条に「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする」と明記されている。

リベラル派の矛盾

 租税法律主義の起源は古く、約800年前に定められた英国の大憲章(マグナ・カルタ)にさかのぼる。戦費をまかなうため重税を課した王に貴族が団結して反抗し、課税には貴族の同意を得るよう認めさせた。

 大憲章は同時に「立憲主義」の土台にもなった。立憲主義とは、権力を法で制限する考えである。租税法律主義は権力者が国民に勝手に課税することを制限するわけだから、立憲主義の具体的な表れのひとつといっていい。

RANKING
  • 連載
  • ビジネス
  • 総合