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筈井利人「一刀両断エコノミクス」

タックス・ヘイヴン規制で、税当局の恣意的な徴税横行の恐れ…リベラル派のデタラメ主張

文=筈井利人/経済ジャーナリスト
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 立憲主義という言葉は、最近よく目にするだろう。改憲問題や安保法制に関連して、政府に批判的な野党やリベラル派メディア、言論人が「立憲主義を守れ」と主張することが増えているからだ。安保法制とタックス・ヘイヴンは一見縁遠い話のようだが、どちらも立憲主義に深くかかわるのだ。

 さて、ここでひとつの矛盾に気づかないだろうか。政府や保守派メディアはともかく、いつもは「立憲主義を守れ」「憲法で権力を縛れ」と声高に主張する野党やリベラル派メディアまでが一緒になって、権力者である政府に課税強化を求めるのは、筋が通らない。

 たとえば朝日新聞は憲法記念日の5月3日、「立憲主義を取り戻す時」と題する論説主幹執筆の記事で、次のように安倍政権を批判した。

「憲法の縛りを何とか解き放ちたい。この点で、政権の姿勢は一貫してきた」

 この批判には同感だ。ところが一方、朝日は主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)を控えた同月14日、社説で「安倍首相はサミット議長として、議論を引っぱってほしい」とタックスヘイブン対策に発破をかけた。本当に立憲主義を大切に思うのなら、タックス・ヘイヴン問題に限って、権力者である首相を激励するのはおかしい。

 このように言うと、リベラル派は「それは古い考え。現代の憲法にはそぐわない」と反論するかもしれない。だとすれば皮肉なことに、立憲主義の理解は安倍首相と五十歩百歩と言わざるを得ない。首相は2014年2月10日の衆院予算委員会で、憲法についてこう述べている。

「憲法とはまさに権力を縛るためだけのものであるという考え方については、それは古いものではないか」

 立憲主義を信じるのなら、その原点ともいえる租税法律主義を軽視してよいはずがない。思想が力をもつには首尾一貫しなければならない。政府が多くの税を手にすれば、リベラル派の好む社会福祉の予算だけを増やすとは限らない。軍事費や国民の自由を抑圧する政策に回す恐れもある。もしリベラル派が安易なタックスヘイブン叩きを続ければ、いつかその底の浅さが露呈し、権力の暴走に歯止めをかけることができなくなるだろう。
(文=筈井利人/経済ジャーナリスト)

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