
日本のプロ野球(NPB)では、今年からコリジョン(衝突防止)ルールが導入され、連日大きな議論を巻き起こしているが、米メジャーリーグ(MLB)では検討中のルール変更についてイチロー(マイアミ・マーリンズ)が懸念を表明したと地元紙「マイアミ・ヘラルド」が報じている。
コリジョンルールは、MLBでは2014年から運用がスタート。この契機となったのは、MLBのスター選手の捕手バスター・ポージー(サンフランシスコ・ジャイアンツ)が、11年に本塁での激突によって骨折とじん帯断裂をしたことだった。高額で獲得したスター選手を接触プレーで失うことを大リーグ全体の問題として改めたのだ。
日本では、13年に阪神タイガースのマット・マートン選手が明らかにアウトのタイミングだったにもかかわらず、本塁に突入して東京ヤクルトスワローズの田中雅彦、相川亮二の両捕手を負傷させたことがひとつのきっかけとなっている。そんなコリジョンルールによって日本では迷走しているが、一方のMLBでは「ストライクゾーン変更」と「敬遠四球」が議論の的となっている。
今月19日に閉会したMLBオーナー会議の競技委員会では、このふたつの改正合意がなされたと複数の米メディアが報じた。これはストライクゾーンについては、打者の膝頭下部となっているのを膝頭上部とする、敬遠についてはボールを4球投げなくても、球審に敬遠の意思を伝えれば打者を歩かせることができるというものだ。規則委員会が承認すれば選手会の同意がなくても変更が可能で、早ければ来季からの導入が実現するという。いずれも試合時間の短縮につながるというのが変更の意義となっている。
マイアミ・ヘラルド紙もこのルール変更についてふれ、イチローの談話を取り上げている。敬遠四球について「それも野球の一部、変更するべきではない。なぜなら敬遠で苦しむ投手もいるわけで、もしそう(変更に)なったら、本塁打を打ってもベースを一周しなくてよいことになってしまう。野球を変えてしまうのではと心配だ」と語った。
また同紙はイチローに、「もしストライクゾーンが最初から狭まっていたらすでに3000本安打を達成できていたか」と質問したところ、「おそらく、4000本」とイチロー・ジョークで答えたと伝えている。
このほかMLBの日本人選手では、田中将大投手がストライクゾーンの変更について「点が入ったほうがファンは楽しいけれどね。でも、点が取りやすくなったら投手は難しい」とコメントした。
ここ数年、MLBでは打者が打席を完全に外してしまう行為の禁止やイニング間の交代時間に上限を設置するなど、ファン獲得のため試合時間短縮の取り組みを行っている。しかし、ストライクゾーン変更と敬遠四球については、そもそも「野球を変えてしまうのでは」という選手やメディアからの否定的な意見も多い。
野球の醍醐味、エンターテインメント性を失ってしまうことを懸念して議論が高まるMLB。日本では運用後に混迷を深め、ファンからもわかりにくいと騒がれる“NPBコリジョンルール”。NPBはもっとMLBをお手本にしてもらいたいところだ。
(文=hメディア)