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高井尚之が読み解く“人気商品”の舞台裏

「質にこだわり過ぎの」コメダ、他社がパクリまくり?でもマネできない謎の超高収益経営

文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント
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毎週、店舗でコーヒーを淹れるプロ社長

 企業規模が拡大するにつれて本社を移転させる会社は多い。そして多くの会社は交通至便な場所に社屋を構え、経営者はホワイトカラー化する。それが良いか悪いかではなく、企業の実情だ。たとえばカルビーは、広島県広島市で設立された後に本社を東京都北区赤羽に移転。さらに現在は千代田区に移し、東京駅前のインテリジェントビルに本社を構える。

 コメダも名古屋市西区で創業後、本社機能を同市瑞穂区に移転。2001年からは同市東区に移した。JRや地下鉄の駅(複数ある)から徒歩数分の幹線道路沿いで、本社社屋の1階には「コメダ珈琲店 葵店」がある。店舗数686店(16年5月現在)のうち98%がFC店だが、同店は数少ない直営店だ。つまり本社は、階段を下りれば店舗の実態がわかる場所にある。

「質にこだわり過ぎの」コメダ、他社がパクリまくり?でもマネできない謎の超高収益経営の画像6コメダの本社&葵店

 この本社の打ち合わせコーナーには、店舗で使用されているのと同じイスがある。筆者が取材を始めた8年前は、やや薄暗い空間だったが、その後に改築されて明るい空間に変わった。

 現在のコメダHD社長は13年7月に就任した臼井興胤氏で、同社の経営を担う投資ファンドが招いたプロ経営者であることは知られるようになった。一橋大学を卒業後に三和銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入行し、その後ゲームメーカーのセガ(現セガゲームス)に転職し、ナイキジャパン、日本マクドナルドのCOO(最高執行責任者)を歴任し、セガに復帰して社長に就任。さらにグルーポン東アジア統括副社長を経てコメダに転じた経歴を持つ。

 ファンドが招いたプロ経営者――と紹介すると、冷徹に数字で判断する人物像を想像するかもしれないが、臼井氏は非常に現場主義の人物だ。マクドナルドでもコメダでも、入社前は立場を隠して各店舗でアルバイトとして働いた。今でも週に一度、朝6時から9時までは制服に着替え、コメダの店舗で自らコーヒーを淹れて来店客に提供している。

 社長就任当初に店の実情を知るためならともかく、就任して3年たった現在も続ける理由を、「コメダのブランドをつくるのは、毎日お客さんと向き合って蓄積された『顧客体験』。それを現場で体感し続けるためです」と臼井氏は話す。

店の本質は「しゃべり場」にあり

 コメダはいうまでもなく喫茶店だが、その本質は飲食店プラスアルファにある。ここでいうプラスアルファとは、「懇談の場」という意味だ。単にコーヒーを飲むだけなら、コンビニエンスストアの100円コーヒーや、缶コーヒーの自動販売機も全国津々浦々にある。

 それでも、喫茶店やカフェに客が集まるのはなぜか。コメダは、もともと「日本一喫茶代におカネを使う都市」である名古屋市の消費者に鍛えられてきた。総務省統計局「家計調査」によると、同市の1世帯当たりの喫茶代年間支出額は1万4301円で、東京23区の8879円の1.6倍だ(2013~15年の平均)。名古屋では、オフィスの会議室代わりや自宅の居間の延長線上で喫茶店を利用する客が多い。仕事の打ち合わせや友人・知人との懇談で使われるのだ。

 とかくファンド主導の経営に注目が集まる同社だが、毎日の来店客の評価の集大成がコメダブランドとなる。それにどう対応し続けるか――。

 上場後の同社の姿勢が注目されている。
(文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)

●高井 尚之(たかい・なおゆき/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)
1962年生まれ。(株)日本実業出版社の編集者、花王(株)情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、大企業・中小企業の経営者や幹部の取材をし続ける。足で稼いだ企業事例の分析は、講演・セミナーでも好評を博す。2015年10月16日に発売された『吉田基準』(日本実業出版社)では取材・構成を担当。これ以外に『カフェと日本人』(講談社現代新書)、『「解」は己の中にあり』(講談社)など、著書多数。
E-Mail:takai.n.k2@gmail.com

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