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英国のEU離脱、未曾有の世界同時景気後退の兆候…欧米各国、自国第一主義で協調崩壊

文=真壁昭夫/信州大学経法学部教授
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 その結果は、「英国はEUに間違いなく残留する」と楽観視していた市場関係者を慌てさせ、リスク回避の取引が急速に進んだ。英ポンドの売りヘッジ取引、欧州銀行株やイタリアなど南欧諸国の国債売却が進んだ。

 6月16日には英国の地方都市で、残留を呼びかけていた下院議員が離脱支持者に銃撃され、命を落とした。これは英国内外に衝撃を与え、以降の世論調査では残留への支持が優勢とみられた。ブックメーカー(賭け屋)のオッズでも80~90%の確率で残留が示され、金融市場参加者は「やはり残留で間違いない」と、リスク回避のポジション(持ち高)を手じまい、英ポンドや銀行株の買戻し、米独国債の売却を進めた。オッズ(賭け率)には掛け金がかかっているだけに、世論調査よりも信頼度が高いといわれていた。投票直前の世論調査でも残留への支持が離脱を上回り、多くの投資家はEU残留を楽観視していたと考えられる。

国民投票のEU離脱決定の背景

 国民投票の争点は、難民・移民問題だ。EU離脱を求める世論は難民・移民への怒り、不満に駆られていた。特に、高齢者や貧困層を中心に、難民への批判は根強かった。そして、英国のエリート階級の中にも、国境管理の難しさなどを理由に難民問題を批判するものが多かった。

 ボリス・ジョンソン前ロンドン市長など離脱派の政治家は、国民投票で離脱が決定された場合、即時にEU離脱のシナリオは描いていなかったかもしれない。それよりも、離脱派の政治家は難民・移民問題への不満などを煽ることで、自らへの支持を取り付けたかったのかもしれない。その上で、英国の離脱決定をEUに突き付けることで、ドイツ等に妥協を迫り、より英国に有利な条件を引き出すことを離脱派の政治家は目論んだとも考えられる。一部国民の不満と、自らの利害に駆られた政治家の思惑が一致した結果、英国は自国優先に流れEU離脱を選択した。

 冷静に考えれば、英国はEUに加盟し続けることで、経済上のメリットを享受していくほうが賢明だろう。EU域内では関税同盟が整備され、英国から大陸欧州への自動車輸出にかかる関税はゼロだ。金融機関であれば、どこかひとつのEU加盟国で認可を得れば、どのEU加盟国でも支店の開設など営業活動を展開できる。これを「単一パスポート制度」という。

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