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村澤典知「時事奔流 経営とマーケティングのこれから」

星野リゾート、最強の経営…カギは20年間の顧客満足度調査、カスタマーセントリックな仕組み

文=村澤典知/インテグレート執行役員、itgコンサルティング 執行役員
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 ここで集まったデータは、顧客満足度の評価結果として、経営層だけでなく現場のスタッフも確認することができ、経営層の意思決定や現場スタッフの日々の改善活動にすぐさま活用されていく。

顧客満足度と「利益」を紐づける

 星野リゾートのように顧客満足度を測り、それを高める活動を開始したものの、コストと労力ばかりがかさみ、ほどなくやめてしまったという企業も多いだろう。このような悲劇が起こらないようにするためには、顧客満足度が「売上」や「利益」にどれだけ影響するかを特定することが重要だ。

 一般的には、顧客満足度が上がればリピート化が進み売上が向上し、また値引き等の販促費も抑えられるため、利益も上がるというようなことは想定される。ただし、これは一般的な傾向にすぎないため、どの活動がどれだけ貢献するかは、企業によって千差万別である。この千差万別のなかで、自社に固有の売上・利益に及ぼすインパクトを明らかにすることによって、経営としてどれだけ注力すべきかの道筋が見えてくる。

 星野リゾートの場合、「全体満足度」に関する質問が全体の4分の1ほどあるが、これらの質問があるポイントを維持しないと「利益」にも「リピーター」にもつながらず、残りの4分の3の質問は、お客様が「不満がなければいい」という評価であれば「利益」や「リピーター」にさほど影響が出ないといったことまでわかっている。

 だからこそ、20年以上にもわたって調査が継続できているのであろう。星野リゾートでは、調査は「成績表」ではなく、日常業務を改善するための「健康診断」として浸透している。

できない言い訳をつくらせない「マルチタスク化」

 顧客ニーズを知り、どれが利益につながるかが見えてきても、実際に望ましい行動に移せるかは別問題だ。人によっては、それは自分の仕事ではない、他のスタッフがやるべき業務だということになり、課題に気づいても改善されずに放置されたままになることもよくある。企業規模が大きくなればなるほど、組織の専門分化が進み、このような状態になりやすい。いわゆる、組織の縦割り問題だ。

 星野リゾートの場合、どのようにこの課題をクリアしているのか。それは、スタッフの「マルチタスク化」だ。これはその名の通り、1人のスタッフが特定の業務のみを担当するのではなく、複数の業務を担当することを意味する。同じスタッフが1日のなかで、調理・配膳や受付、客室清掃など、宿泊全体のさまざまな接点に関連する仕事を担っている。このように複数の役割を担うことで、「それは自分の仕事ではない」といった縦割り問題を回避することができる。

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