
ルネサス エレクトロニクスの業績が急落している(図1)。売上高は2014年第2四半期以降、ジリ貧状態にある。営業利益は同年度以降黒字化しているものの、16年度に入って急降下し始めた。

その苦境に喘ぐルネサスを食い物にしている産業がある。日本のモノづくりを支えているといわれる自動車産業である。
日本の自動車メーカーは、ルネサスが生産する車載半導体(マイコン)を不当に安価に入手してきた。この既得権益を手放したくないために、ルネサスで気に入らない行動をとった会長やCEO(最高経営責任者)をクビにしてきた。日本の自動車産業は、ルネサスを私物化しているとしかいいようがない。ルネサスのマイコンがどうしても必要なら、正々堂々とルネサスを買収すればいい。それもせずに同社のトップ人事に介入するのは、いい加減にしてもらいたい。
ルネサス新社長就任
ルネサスは4月15日、呉文精(くれ・ぶんせい)氏を6月にCEOに迎えると発表した。これは、ルネサス筆頭株主である産業革新機構の志賀俊之会長兼CEOが主導した由々しき人事である。
呉氏は1956年生まれ。79年に東京大学法学部を卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。米プリンストン大学でMPA(行政修士)取得。GEキャピタルなどを経た後、日産自動車系列の部品メーカー、カルソニックカンセイに入り、社長兼CEOになった。13年には、日産の常務取締役への就任が発表されたが、日本電産にヘッドハンティングされCOOに就任した。
ところが、呉氏はわずか2年後の15年6月にCOO職を外され、9月に「一身上の都合」で退職した。日本電産の永守重信会長兼社長との間で「何かあったのではないか?」とみられている。
呉氏をルネサスCEOに引っ張ってきた志賀氏は、呉氏にとっては因縁浅からぬ日産のCOO、副会長を歴任した人物である。この人事には、ルネサスを私物化する自動車産業界の陰謀が感じられる。この人事に言及する前に、ルネサス歴代社長の暗黒の歴史をおさらいしておきたい。