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“絶望の高原”を乗り切るためには?──『絶望読書』著者・頭木弘樹インタビュー

構成=清田隆之

頭木:絶望から立ち直るときって、必ず“停滞時期”が訪れるんです。つまり回復の曲線が横ばい状態になるときがあって、実はそこが一番つらい。僕はこれを「絶望の高原」と呼んでいますが、それは2~3日の場合もあるし、何年もかかる場合もある。この時期って当人も「なんで立ち直れないんだろう」と悩んでしまうし、周囲も「いい加減に立ち直れ」と苛立ってしまうんですよね。それで「ポジティブになれ」という迫害を受けてますます立ち直れなくなるという負のスパイラルがあり……。「絶望と向き合う」というと、なんとなく悪いことも全部丸飲みして「これでもいいんだ!」と思わなきゃいけないというイメージがありますが、そうじゃない。即席で治そうとせず、客観的に自分を見ることが大切なんですね。そういう絶望の期間と向き合うためには、やはり読書が最も効果的だろうと思います。

──頭木さんは本の中でもとりわけ古典文学をオススメしていますが、これはなぜでしょう。

頭木:文学で扱われるのは極めて個別的な状況ですが、そこにはとても普遍的なことが書かれていることが多い。例えば安部公房の『鞄』という短編小説は、あるとき鞄を持った男が自分の家にやってきて、「ここで雇ってほしい」と言ってくるという妙な話なんですね。男は重たい鞄を持っているため、急な坂などは進めず、歩ける道が消去法的に決まってしまう。それでこの家にたどり着いたという意味のわからない話なんですが、病気をしているときに読むとなぜか感動するんですよ。「行ける道が限られていて、それを歩むしかない」というのは、病人にも通じる状況だからです。このように、文学には「これはまさに自分の体験だ」「自分の気持ちを一番わかってくれるのはこの本だ」と思わせる力が宿っています。太宰治なんか特にそうですよね。ファンはみんな「太宰をわかってるのは自分だけ」「自分をわかってるのは太宰だけ」と、作者と一対一の関係になっている(笑)。本当に孤独なとき、「文学だけは自分の気持ちをわかってくれるし、周囲にわかってもらえない気持ちがちゃんとそこに書かれている」という気持ちにさせてくれるわけで、これはすごいことだなと。歴史の風雪に耐えてきた古典文学には、とりわけその力があると思います。

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