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筈井利人「一刀両断エコノミクス」

最低賃金「引き上げ」は失業の増大を招き、弱者をより苦境に追い込む…経済学の常識

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 それだけではない。最低賃金引き上げがもたらす失業というコストは、社会の全員で平等に負担するわけではない。多くの場合、失業に追いやられるのは、低い賃金だからこそ仕事にありつける、技能に乏しく貧しい人々である。一番助けなければならない弱い立場の人々を苦しめることになる。

 技能に乏しくてもなんとか職を失わずに済んだ人々は、引き上げられた最低賃金を享受することができる。しかしその一方で、一部の人々に失業という深刻な犠牲を強いるのであれば、とても人道的な政策とはいえない。

「マイナスよりプラス面が多い」の真意

 さて、この不都合な事実を突きつけられると、最低賃金引き上げを支持する人々は、よくこう反論する。「理屈はともかく、現実には最低賃金を上げても雇用は悪化していない」と。

 たしかに、専門の経済学者にもそれに近い見解を述べる人はいる。米プリンストン大学教授のアラン・クルーガー氏は2015年11月07日付「現代ビジネス」記事『時給1400円まで「最低賃金」を引き上げるべきだ!それでも雇用は悪化しない 米経済学界の天才が「常識」をひっくり返す』で、過去25年間以上にわたる多くの研究によると、最低賃金は「雇用にはほとんど、または全く影響がないことが明らかにされている」と述べている。

 しかし気をつけなければいけないのは、クルーガー氏が、最低賃金に「適切なレベルで設定されている場合」という慎重な条件を付けていることだ。では、「適切なレベル」とはどのくらいなのか。

 クルーガー氏はこう述べる。「最低賃金を時給12ドル(現在の為替レートで約1200円)に設定した場合は、低賃金労働者にとりマイナスよりプラス面が多いが、国としての最低賃金を時給15ドル(約1500円)にすると、それは我々にとって未知の世界となり、望ましくないリスクや意図せぬ結果をもたらしかねない」

 この見解が日本にもあてはまるとすれば、少なくとも共産党や一部の活動家、リベラル派言論人らが唱える1500円は、最低賃金引き上げに好意的なクルーガー氏ですら、「望ましくないリスクや意図せぬ結果をもたらしかねない」と警告するほど常軌を逸した高水準ということになる。

 クルーガー氏が賛同する約1200円の水準にしても、雇用に単純なプラスではなく、「マイナスよりプラス面が多い」と表現していることに注意が必要だ。プラス面とは職を失わずに済んだ人々が引き上げられた最低賃金を享受することを指し、マイナス面とは失業を意味する。

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