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EU離脱、世界的「英国離れ」加速…米中欧が同時景気後退突入&金融危機再来の兆候

文=真壁昭夫/信州大学経法学部教授
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 ここで問題となるのが、欧州各国の財政出動が容易ではないことだ。公的資本の注入など、不良債権処理の痛みを吸収できる対策が整備できるかは不透明だ。例を挙げると、イタリア政府は不良債権を受け入れる機関(バッドバンク)の設置について、EUの支持を取り付けようと交渉を進めてきた。一部報道では400億ユーロ(邦貨換算額で4.5兆円程度)の公的資本注入が検討されているようだ。しかし、この資金規模が不良債権処理を貫徹するために十分か、状況は不透明だ。7月に入り、イタリア大手銀ウニクレディトの株価は過去5年間の最安値を更新している。

 これまで、欧州経済はドイツの景気回復に支えられてきた。しかし、デフレ圧力は根強く、欧州全体の景気は堅調といいづらい。欧州の政治リスクは中国経済にも波及する恐れがある。中国にとって、欧州は最大の輸出先だ。政治の混乱が消費者心理や企業の設備投資計画の後退につながるのであれば、中国経済への懸念も高まるだろう。

 そして、中国の減速は世界経済にもマイナスだ。すでに、中国の大都市では住宅価格の上昇にピークアウトの兆しが出ている。当局が下落を容認したこともあり、人民元への売り圧力も強まっている。

 これまで中国経済が減速し、過剰な生産能力と需要低迷という問題が深刻化するなかでも、世界的な経済危機は回避されてきた。なぜなら、米国の景気回復が世界経済を支えたからだ。しかし、今後も米国経済の回復が続く保証はない。

 リーマンショック後、09年6月に米国経済は底を打ち、足掛け7年の景気拡張のなかにある。第2次世界大戦後の平均的な景気拡張期間は約5年だ。労働生産性は低下し、企業業績への期待も持ちづらいなか、米国の景気は頂上まであと一息という状況にあるかもしれない。主要国の金融・財政政策が、追加出動の余地がないほどまでに策を打ち尽くし、景気を支える手段は少なくなっている。世界経済の減速リスクは徐々に高まっていると考えられる。

 銀行をはじめ、欧州金融機関の経営不安が高まった場合、EU・ユーロ圏の経済にもスパイラル的に下方圧力がかかる恐れがある。その場合、わが国をはじめとする世界各国の景気は、相当に厳しい状況に直面することが想定される。
(文=真壁昭夫/信州大学経法学部教授)

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