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手島直樹「マーケット・インテリジェンスを磨く」

日本企業が手を染める「危険な財務戦略」…見せかけの財務改善が企業を滅ぼす、リキャップCBの罠

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リキャップCBのもう一つのメリット

 リキャップCBのメリットとしてもう一点あげるとすれば、転換社債のコストがゼロだということです。資本に求められる株主資本コストは、平均的な日本企業では8%といわれていますので、コストが8%の資金をタダの資金に置き換えることにより、加重平均資本コスト(WACC)も低下すると期待されます。図が示すように、リキャップCBを実施しても、バランスシートの左側、つまり資産サイドにはまったく変化がないため、企業が生み出すキャッシュフローには変化がないのですが、割引率となるWACCが低下すれば、企業価値は高まることになります。

 このように考えると、リキャップCBを実施しないことは機会損失のように思われますが、実はこれには副作用が潜んでいるのです。

リキャップCBの副作用

 副作用について述べる前に、リキャップCBの魅力が薄れつつある点を確認しておきます。その原因は低金利です。転換社債の魅力はゼロコストですが、現在、社債を発行してもゼロのような金利となっているので、転換社債の金利面でのメリットはほぼなくなっています。また、転換社債自体はゼロコストかもしれませんが、証券会社に支払う手数料は社債よりも高く設定されています。ですので、コスト面でのリキャップCBのメリットはなくなったといえるでしょう。また、後述するリキャップCBの副作用を考えれば、社債を発行してその調達資金で自社株買いをするほうが賢明な財務戦略となるのです。

 次に副作用について考えましょう。その原因はシンプルで、株価が上昇すれば転換社債が株式に転換されることです。株価が上昇することは、会社にとっても株主にとっても良いことですが、転換社債が存在する場合には、そうはいかなくなってしまうのです。なぜならば、転換社債が株式に転換されることになるからです。株式に転換されることにより、これまでバランスシート上でゼロコストの転換社債だったものが、高コストの資本に置き換わってしまいます。これでは単に元の木阿弥です。

 そもそも、高コストの資本をゼロコストの転換社債に置き換えるためにリキャップCBを実施したにもかかわらず、株式への転換により以前の状況に逆戻りしてしまうのです。ですから、当期純利益がリキャップCB実施時から変化していなければROEは下落することになります。これでは、株式に転換されるまでの間だけ高ROE企業に見せかけるだけ、ということになってしまうのです。

 では、転換社債の株式転換後にROEを低下させないために企業はどう対応するのか。そこで、日本ハムのケースを見てみましょう。

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