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宇多川久美子「薬剤師が教える薬のリスク」

がん細胞を死滅させる超画期的新薬が続々誕生…根治切除不能な悪性も治療

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画期的な薬、医療費を莫大に増やすおそれ

 さらに、もう少し詳しく解説します。

 がん細胞を殺す免疫細胞としては、T細胞などがあります。T細胞には、がん細胞を細胞死へと導く機能があります。しかし、T細胞の表面には、「抑制に関わる部位」が存在しています。これを、PD-1といいます。承認されたオプジーボは、免疫チェックポイント阻害薬と呼ばれる薬のひとつですが、「免疫チェックポイント」とは、本来、免疫の暴走を防ぐ仕組みで、がん細胞はこれを悪用しているのです。

「がん細胞が差し出した手」というのは、がん細胞の表面に存在する「PD-L1」というタンパク質のことで、「握手してしまった免疫細胞の手」というのが免疫細胞の表面に存在している「PD-1」というタンパク質です。がん細胞のPD-L1にPD-1をつかまれてしまうと、免疫チェックポイントが作動し、免疫の機能を停止してしまうのです。これによって、攻撃を免れたがん細胞はどんどん増殖してしまいます。

 そこで、免疫細胞表面のPD-1をあらかじめカバーし、がん細胞のPD-L1が結合することを阻止することができれば、免疫細胞のチェックポイントが作動することなく、免疫システムが活性化されて、がん細胞を攻撃することができるようになります。このT細胞表面のPD-1のカバーの役目をするのがオプジーボなのです。

 オプジーボは、米ブリストル・マイヤーズ・スクイブと日本の小野薬品工業が共同開発した薬です。日本では小野薬品工業が2014年7月に、根治切除不能な悪性メラノーマの治療薬として、オプジーボの製造販売承認を世界に先駆けて取得しています。これによって、オプジーボは世界で初めて承認を取得したPD-1免疫チェックポイント阻害薬となったのです。

 オプジーボが画期的なのは、患者自身の免疫機能に働きかけるそのメカニズムです。現在、日本で承認されている免疫チェックポイント阻害剤はオプジーボとヤーボイ(一般名:イピリムマブ、抗CTLA-4抗体)の2剤です。今のところ、ヤーボイの適応は悪性黒色腫の患者のみです。

 国立がん研究センター東病院では、新規の免疫チェックポイント阻害剤「ペンブロリズマブ」の国際共同治験が始まっています。日米欧の約10施設が参加し、胃や大腸、食道など約20種のがんでの治療効果が調べられています。

 成人T細胞白血病に対する抗体医薬「モガムリズマブ」と、免疫チェックポイント阻害剤を併用する臨床試験も取り組まれています。モガムリズマブには免疫を抑制する制御性T細胞を減らす作用があり、相乗効果で免疫を増強する狙いです。

 その効果が大いに期待されている免疫チェックポイント阻害薬は、これからも続々と承認される見込みです。それらの薬も含めて、どれも極めて高い薬価になることでしょう。その効果が高ければ高いほど、使用される薬剤費も膨大になります。そしてこのことは、日本の医療費を跳ね上げることにもつながっていくのです。
(文=宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士)

●宇多川久美子 薬剤師として20年間医療の現場に身を置く中で、薬漬けの治療法に疑問を感じ、「薬を使わない薬剤師」を目指す。現在は、自らの経験と栄養学・運動生理学などの豊富な知識を生かし、感じて食べる「感食」、楽しく歩く「ハッピーウォーク」を中心に、薬に頼らない健康法を多くの人々に伝えている。『薬剤師は薬を飲まない』(廣済堂出版)、『薬が病気をつくる』(あさ出版)、『日本人はなぜ、「薬」を飲み過ぎるのか?』(ベストセラーズ)など著書多数。

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