
三谷幸喜が脚本を務め、高い人気を誇っているNHK大河ドラマ『真田丸』。真田幸村こと真田信繁を中心に、真田家と同家に関わるさまざまな武将や戦国の家族ドラマが描かれている。幅広い世代の人物が登場するだけに、出演する俳優も若手からベテランまで幅広い。
ベテランのなかには以前に真田家の一員を演じた俳優も多く、そこにはさまざまな縁が見え隠れする。これは偶然なのか、はたまた三谷のマニア向けの遊び心なのか。その一部を紹介しよう。
草刈正雄、草笛光子に隠された秘密
まずは、幸村の父である真田昌幸を演じている草刈正雄だ。1985~86年に放送されたNHKの時代劇『真田太平記』では幸村を演じている。まさに、子から親に昇格した配役といえる。
そして幸村の祖母であるとりを演じている草笛光子は、98年のドラマ『家康が最も恐れた男 真田幸村』(テレビ東京系)で幸村の母・寒松院(薫)を演じている。『真田丸』では、高畑淳子が演じている役だ。つまり、こちらも母から祖母(義理ではあるが子から親)へと昇格している。
また、こんな関係もある。
豊臣秀吉の重臣である大谷吉継を演じているのが、藤原紀香との結婚が話題の片岡愛之助。その愛之助の育ての母である高田美和は、89年のドラマ『風雲!真田幸村』(同)で、秀吉の側室である淀の方(茶々)を演じているのだ。『真田丸』では、竹内結子が演じている役だ。
吉継も茶々も、豊臣家を描く上では重要な役割だが、役柄だけでなくリアルな親子関係も『真田丸』には盛り込まれているようだ。
仮面ライダー1号にまつわる因縁も
また、蛇足かもしれないが、もうひとつ興味深い関係がある。徳川家康の家臣である本多正信と本多忠勝を演じているのが、近藤正臣と藤岡弘、だ。
実年齢では近藤74歳、藤岡70歳と4歳しか違わない。しかも、この2人は『仮面ライダー』(毎日放送)という運命の糸でつながっている。藤岡が仮面ライダー1号こと本郷猛役で大人気を博したことは、ご存じの人も多いだろう。
しかし、もともと本郷役を演じる予定だったのは近藤で、スケジュールの関係で出演できなくなってしまったという経緯がある。そこで、代役として起用されたのが藤岡だった。そんな2人の競演が、『真田丸』では、なぜか同じ本多一族の役として実現しているのだ。往年の仮面ライダーファンには必見の配役だろう。
この配役が、すべて計算ずくだったとしたら、恐るべきは三谷である。
(文=星野憲由)