ビジネスジャーナル > ライフニュース > 画期的ながん治療薬、1人3500万  > 2ページ目
NEW
宇多川久美子「薬剤師が教える薬のリスク」

画期的ながん治療薬、費用は1人年間3500万円!驚愕の高価格になる製薬業界の異常な慣習

文=宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士

 オプジーボは、がん細胞そのものをたたくのではなく、がん細胞によって活動が制御されていた免疫細胞を活性化させる薬剤なので、効果の発現がすぐには出てこないこともあります。また、腫瘍が縮小すれば効果が出たことが明らかですが、免疫に働きかける薬では、効果が現れる前に腫瘍が大きくなることもまれにあるようなのです。つまり、投与後にがんが大きくなった場合でも、「効果がない」とすぐに判断するのは難しいのです。

 オプジーボがどんなタイプの患者に効くのか、その指標となる分子を見つける研究も盛んに行われているようですが、最低でも半年間は使って様子をみるというのが現状のようです。

不透明な薬価決定のプロセス

 ところで、100mg瓶1本で72万9849円という驚愕の値段がついてしまったのは、なぜなのでしょうか。それを考察するために、薬の値段の決め方について説明いたします。

 医師が処方する医薬品の公定価格は、「薬価」といいます。薬価の決め方は、2つの方式に大別されます。ひとつは、製造コストや研究開発費、営業利益などを積み上げて計算する「原価計算方式」。もうひとつは、効能が似た既存の薬と比較して決定する「類似薬効比較方式」です。

 原価方式では、製造コストや研究開発費を行政が検証することは難しく、メーカーの申告を信じるしかないという現実があります。つまり、経費の妥当性はメーカーまかせで、薬価は「言い値」となっているのです。

 7月10日付本連載記事『最も高い「がん消失」率のがん治療薬誕生!抗がん剤よりはるかに効く!根治切除不能でも治療』で詳述しましたが、1992年に本庶佑(ほんじょたすく)京都大学客員教授が「PD-1」分子を見つけてから、医薬品として承認されるまで20年以上の歳月と莫大な研究費を費やしてオプジーボが生まれました。それなりの高い薬価になるのは当然といえるかもしれません。

 類似薬効比較方式で考えてみても、オプジーボは、がん細胞が免疫細胞にかけているブレーキを解除するという今までの抗がん剤では類を見ない、まったく新しいタイプの薬です。類似薬がないということは、その薬の価値をさらに跳ね上げさせます。

 また、これから類似薬が出てきた場合も「原価方式」で高く設定された薬を基準にするので、類似薬効比較方式では、製造コストが大幅に低くなった後でも薬価は高めに設定されることにもなります。

宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士

宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士

薬剤師として20年間医療の現場に身を置く中で、薬漬けの治療法に疑問を感じ、「薬を使わない薬剤師」を目指す。現在は、自らの経験と栄養学・運動生理学などの豊富な知識を生かし、感じて食べる「感食」、楽しく歩く「ハッピーウォーク」を中心に、薬に頼らない健康法を多くの人々に伝えている。『薬剤師は薬を飲まない』(廣済堂出版)、『薬が病気をつくる』(あさ出版)、『日本人はなぜ、「薬」を飲み過ぎるのか?』(ベストセラーズ)、『薬剤師は抗がん剤を使わない』(廣済堂出版)など著書多数。最新刊は3月23日出版の『それでも「コレステロール薬」を飲みますか?』(河出書房新社)。

『その「一錠」が脳をダメにする』 市販薬、処方箋、サプリメントの副作用など、 病気を抱える人だけでなく、小さな子どもや高齢者を持つ家族にも必読の1冊。 amazon_associate_logo.jpg

画期的ながん治療薬、費用は1人年間3500万円!驚愕の高価格になる製薬業界の異常な慣習のページです。ビジネスジャーナルは、ライフ、, , , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!