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田中俊之「生きづらい中年男のための処方箋」

勝ち組がつくる「普通」を放棄し、何度でも「人生をあきらめ」れば人生は楽しくなる!

構成=編集部

ダメな自分を認めて、自分が天秤にかける

山田 そういう意味では、リセットもそうですが、「一度、きちんと自分をあきらめてあげる」ということが大事だと思います。「あきらめる」というのは「許し」でもあるので。

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田中 「しがみつく=自己防衛」だから傷つく可能性もありますが、リセットして「自分が選ぶ」というほうが能動的ですね。「働く」「働かない」にしてもそうですが、何かにしがみつくよりも「自分で決める」という思考法が大切だと思います。「リセット」という言葉は、僕が書いてきた本の内容にもつながっていると思います。

山田 「天秤にかけられるのか、それとも自分が天秤にかけるのか」ということですね。

田中 みんな「自分は天秤にかけられている」と思っている。でも、見方を変えれば、自分が天秤にかけることも可能なんですよね。

山田 売れている芸人って、後輩でも同期でも先輩でも、やっぱりすごいですよ。みんな、売れているだけの理由がある。そこでも「あぁ、自分にはそういうものがないんだな」って、一度あきらめてあげないと次の一手がないですから。

田中 その話は清々しいですね。男爵の「リセット」「あきらめる」って、自分を許している感じがありますが、「ダメな自分を認める」ということにも通じるものですか?

山田 それも含まれると思います。

田中 だから、「引きこもっていた期間は無駄でした」って言い切ることもできるんですね。

山田 どう考えても無駄ですからね。家で鬱々としているよりは、友達と外で遊んでいたほうが楽しいだろうし。でも、みっともない話ですよ。「人生、“上がった”な」って思った時があったから、そういう考え方になったのかもしれませんが。

山田「絶対、あなたの人生のほうがいい」

田中 「上がり」を感じた時は、いつだったんですか? そういう感覚を味わえるのって、ごく限られた人だと思います。世の中のほとんどの人にとって、一生ない感覚ですから。

山田 中学入試に合格した時と、一度売れた時ですね。ただ、僕は人生の「勝ち」と「負け」の総量って、みんな同じくらいだと思います。僕はバランスが極端なだけで、ずっと負けているところにドーンと売れた。これは確かに気持ちいいですが、そこまで大きな波でなくても、年に1回ぐらいはみんな幸せなことがあると思います。

 だから、「どこでもらうか」というだけの話だと思いますよ。僕みたいにずっと負けていてドカンドカンと波がくるか、小さい波で勝ち負けを繰り返しながら生きていくか。僕は後者のほうがいいですけどね。大きい波が来る前に死ぬ可能性もありますから(笑)。

 平々凡々と会社勤めをして地道にがんばっている人が派手な芸能人より何か劣っているとか、まったく思わないし、むしろ「僕も、幸せを小分けでもらえるプランにしたかったな」と思います。いきなりドーンって幸せをもらっても、使い方もわかりませんから。

田中 自分で自分を慰めるのとは違って、今の男爵のお話はすごく勇気付けられますね。多くの男性にとって、会社で働く自分を客観視するのは難しいことなので。

山田 読者の方には「絶対に、あなたのほうが僕より何倍もいい人生ですから」と言いたいですね。自分では「平々凡々」と思っているかもしれませんが、そういった方たちがいるからこそ、僕のような芸人が生きていけるわけですから。どっちがいいとかすごいとか、まったくないと思います。
(構成=編集部)

【※1】「『日刊SPA!』(2016年5月10日『毎日がつまらない』中年男性の72%が回答)

後編へ続く

田中俊之/武蔵大学社会学部助教

田中俊之/武蔵大学社会学部助教

社会学博士 武蔵大学社会学部助教
1994年 都立武蔵高等学校卒業
1999年 武蔵大学人文学部社会学科卒業
2001年 武蔵大学大学院人文科学研究科社会学専攻博士前期課程修了
2004年 武蔵大学大学院人文科学研究科社会学専攻博士後期課程単位取得満期退学
2008年 博士(社会学)取得 武蔵大学大学院人文科学研究科社会学専攻甲第7号
学習院大学「身体表象文化学」プロジェクトPD研究員、武蔵大学・学習院大学・東京女子大学等非常勤講師を経て、2013年度より武蔵大学社会学部助教

『ヒキコモリ漂流記』 神童→名門中学に合格→引きこもり→大検取得で大学へ→失踪→上京して芸人に→借金苦から債務整理→そして、復活!人生いつだってやり直せる!?髭男爵が七転び八起きの人生から学んだやり直しのルール。 amazon_associate_logo.jpg
『不自由な男たち その生きづらさは、どこから来るのか』 男は不自由だ。子どもの頃から何かを成し遂げるべく競争するように育てられ、働くのが当たり前のように求められてきた。では、定年を迎えたら解放されるのか。否、「年収一千万の俺」「部長の俺」ではなくなったとき、「俺って何だったんだろう」と突然、喪失感と虚無感に襲われ、趣味の世界ですら、やおら競争を始めてしまうのだ。本書は、タレント・エッセイストとして活躍する小島慶子と、男性学の専門家・田中俊之が、さまざまなテーマで男の生きづらさについて議論する。男が変わることで、女も変わる。男女はコインの裏表(うらおもて)なのだ。 amazon_associate_logo.jpg

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