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日銀の異次元金融緩和、行き詰まり鮮明…出口なき緩和拡大で未知の領域突入か

文=真壁昭夫/信州大学経法学部教授
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 では、金融政策の修正は可能か。理論的には可能だが、実際は口で言うほど簡単ではない。なぜなら、マイナス金利付き量的・質的金融緩和の内容が弱められることになれば、金利には上昇圧力がかかりやすいからだ。

 多くの投資家が、日銀の国債買い入れを活用して収益を得ている。これが日銀トレードだ。そして、マイナス金利への批判がある一方で、さらなる深掘りがあるとの見方が一部投資家の国債購入を支えている。そのため、市場が現行の金融政策の効力が弱められると考えるような修正は、金利急上昇などの混乱につながる恐れがある。

 決定会合後の黒田総裁の発言を確認すると、従来通り「追加緩和に限界はない」と強気な姿勢を崩していない。そのため、日銀が政策の限界を認めるとは考えづらいのも事実だろう。むしろ、さらに強力な金融の緩和が進められる可能性もあるだろう。この点で、日銀がどう金融政策を進めるか、先行きの不透明感は高まっている。

今後の展望

 今後の金融政策を考える際、政府が進める経済対策と日銀の金融政策の関係がどうなるかがポイントだろう。参議院選挙後、安倍首相は政策総動員を強調し、アベノミクスをより強力に進めることを表明している。

 ここでアベノミクスの実態を確認しておこう。

 それは、円安による企業業績のかさ上げ、株価上昇と賃上げ気運の演出だ。2011年11月~15年半ばまで、為替相場ではドル高が進んだ。これは米国の緩やかな景気回復に支えられていた。その上で13年4月から日銀は量的・質的金融緩和を進め、海外要因で進んできた円安の流れを人為的に強めようとした。このためにアベノミクスは金融政策一本足打法だと揶揄するエコノミストもいる。

 より強力なアベノミクスには、さらに強力な金融緩和が欠かせないのではないか。財政政策の発動余地が限られ、金融政策にも手詰まり感が出つつある。もう一度、金融市場の高揚感を醸し出すためには、さらに強力に市場に資金を供給することが重視されてもおかしくはない。そのために、日銀と政府は一種の協定などを結んで連携を強めるかもしれない。

 経済対策の財源確保のために、政府は国債を増発するだろう。これは日銀の追加緩和を支えることにもつながる。増発された国債を流通市場で日銀が買い入れることが進めば、政府は低金利を活用して財政の悪化を抑えつつ経済対策を策定できる。そして、国債の増発によって、日銀は追加緩和の余地を確保する。それは、金融政策によって景気回復を進めようとしてきたアベノミクスに技術的な限界がないことを示すために重要だ。

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