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上昌広「絶望の医療 希望の医療」

大学病院と医学学会が、日本の医療と若い医師を破壊し始め…新専門医制度という愚策

文=上昌広/特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長

 臨床研究不正事件の舞台のひとつとなった千葉大学で研究の責任者を務めた小室一成氏(現東大教授)は、今年6月から、日本循環器学会の代表理事に就任した。日本循環器学会は、内科学会を構成する主要な団体だ。同学会幹部の常識を疑う。問題は内科学会だけではない。オピニオン誌「選択」は6月号に『日本外科学会 医療を腐らせる「黒い利権装置」』という記事を掲載した。

 このなかで、日本外科学会の財務諸表が紹介されているが、内訳がひどい。総収入は約10億円。賃借料1億3211万円、旅費交通費6783万円、そして交際費3588万円。学術交流団体なのに、なぜこんなに金がかかるのだろう。この連中が中心になって運用する新専門医制度が、現場の医師から信頼されないのはやむを得ない。

 前出の岩田教授は手厳しい。日本の専門医資格のことを、「学会にお金を払い、御褒美のように専門医資格をもらえる」(岩田教授)と批判する。彼が所属する日本感染症学会は、専門医の更新の際に自らが発行する「感染症学会誌」に論文発表した場合には10点、それ以外では5点を付与する。「ランセット」や「ニューイングランド医学誌」などの一流誌より自前の学会誌のほうが評価が高いらしい。

 今こそ学会は、その本義に立ち返って議論したらどうだろう。学会の本来の目的は会員の交流だ。近年、IT技術が進化して会員の交流は容易になった。学術誌も増えた。論文を発表する際にも、わざわざインパクトファクターの低い日本の学会誌に投稿する必要はない。従来型の日本の学会モデルが通用しなくなっている。学会は変わらねばならない。ところが、彼らがとった対応は不誠実だった。専門医資格で若者を縛り付けようとした。医療現場への統制を強めたい医系技官と思惑が一致し、事態はこじれた。

 新専門医制度は、「大学教授」という特権階級が、厚労省に「天下り」や「博士号」などを提供し、また彼らの政策を「擁護」する見返りに、診療報酬や補助金などの「保護」を求めているように見える。

 こんなことをしていたら、日本の学会に将来はない。どうすれば、会員の情報交換を活発にできるかを考えるべきだ。おそらく、徹底した情報開示と、権威勾配のない自由な議論の場の提供だ。新専門医制度は、抜本的に見直さなければならない。
(文=上昌広/特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長)

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