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安保徹「間違いやすい医学の常識」

多忙やストレスで、なぜ不妊症・肌の吹き出物・胃潰瘍・便秘が発症?明確な医学的根拠

文=安保徹/新潟大学名誉教授、医学博士
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多忙やストレスで、なぜ不妊症・肌の吹き出物・胃潰瘍・便秘が発症?明確な医学的根拠の画像1「Thinkstock」より

 50代以上の方であれば、以前は青ばなの子供や歯槽膿漏による総入れ歯の大人が多かったことを、記憶しているのではないでしょうか。現在では、青ばなを垂らしている子供はいないでしょう。青ばなと歯槽膿漏には共通点があります。いずれも膿をつくる反応で病気になっているという点です。

 私たちの身体を守る二大白血球が顆粒球とリンパ球で、それぞれ末梢血中には60%対35%くらいの比率で存在しています。顆粒球は主に、細菌を処理して化膿性の炎症を起こして治癒をもたらしています。一方のリンパ球はウィルスなどの小さな異物を、抗体を使って免疫反応で処理しています。

 顆粒球の比率が高いことでもわかるように、私たちの身体に侵入してくる危険な異物は細菌類が多くて、これらを処理するために多くの準備がいるということでしょう。このように、細菌処理に優れた顆粒球を増やすための仕組みが、私たちの身体の中に備わっています。それが、顆粒球の交感神経支配です。顆粒球には膜状にアドレナリン受容体があり、活発な生き方をすると数や比率が増加する仕組みがあります。

 野生動物にとって、自律神経のうちの交感神経が刺激されるのは、空腹時です。空腹になってエサ取り行動が刺激されると手足が傷ついて細菌が侵入してきやすくなるので、顆粒球を多くして身を守る生体反応といえるでしょう。空腹の反対の満腹は、副交感神経優位の体調をつくります。思い当たることがあるでしょう。

 顆粒球が60%から上下に5%ずれるくらいの揺れは合目的な身を守る反応の範囲です。しかし、生き方の無理が続いたり、悩みごとを抱えて苦悩するようなことが長引いたりすると、交感神経が緊張し顆粒球の過剰増多が起こります。これが多くの病気の成り立ちと関係してきます。

自分自身の生き方を改善しないと治らない

 顆粒球は骨髄でつくられ、末梢血に出て常在細菌の存在する皮膚の毛根や消化管の粘膜で一生を終えています。顆粒球増多が起こると、大量の顆粒球が皮膚や腸に押しかけて常在細菌と反応して炎症を引き起こします。

 皮膚で起こるのが、吹き出物やニキビや掌蹠膿疱症などです。傷口の化膿が長引くこともあります。消化管の働きは副交感神経支配なので、ストレスで交感神経刺激が続くと吹き出物と便秘がくることになります。皮膚疾患で掌蹠膿疱症は難病といわれますが、このように考えると原因にたどり着けます。ストレスを除き、血行を良くすると治るのです。ステロイド剤の使用はかえって悪化の原因になります。

安保徹/新潟大学名誉教授、医学博士

安保徹/新潟大学名誉教授、医学博士

1947年、青森県生まれ。東北大学医学部卒業。現在、新潟大学大学院医歯学総合研究科教授(国際感染医学講座免疫学・医動物学分野)。米国アラバマ大学 留学中の1980年に「ヒトNK細胞抗原CD57に対するモノクローナル抗体」を作製。89年、胸腺外分化T細胞の存在を発見。96年、白血球の自律神経 支配のメカニズムを初めて解明。国際的な場で精力的に研究結果を発表し続け、免疫学の最前線で活躍
医学博士安保徹 公式サイト

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