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一方、野村證券、みずほ証券、大和証券、SMBC日興証券や三菱UFJモルガン・スタンレー証券は1400~1900円(野村)の目標株価を据え置いている。
グラウカスの“売り崩し”は、はたして成功したのだろうか。
伊藤忠は猛反論
10%の下げから少し戻したが、8月12日現在の株価は1212.5円(安値は1206.0円)。リポートが出る前に比べて3.5~4%安い水準だ。
株価が足踏みしている間に、総合商社の4~6月期連結決算が出揃い、3月1日から三井物産より高かった伊藤忠の株価が逆転を許した。
8月2日、16年4~6月期決算を発表した伊藤忠商事の鉢村剛CFO(最高財務責任者)は、グラウカスが不正会計を行っていると指摘したことについて20分間に及ぶ大反論を展開した。
「騒げば騒ぐほど、彼等のネームバリューを上げることになる。我々が心配するのは、一般の株主や中長期に伊藤忠の価値が上がると信じている株主が、狼狽してマーケットが混乱すること。それは本意ではないので、(グラウカスの指摘に反論を)申し上げておく」
「(グラウカスは導き出した)結論については責任を取らないと言っている。責任を取らない結論をベースに、伊藤忠の株価が下がることにポジションを張って、このリポートを出している。それで株価が下がったことで、彼等は利益が出ている」
「空売りファンドとは同じ土俵には乗らない。こういう事象に対して、どういう対応をすべきなのか。日本にとっても初めてのケースだ。対応を間違えれば、日本のマーケットへの影響は極めて大きい。そもそも(空売りの)ポジションを持ってからリポートを出すという倫理観はどうなっているのか。こうした点を考え、対応を考えていかなければならない」
「私どもに一点の曇りもない。こういう対応を許していいのかというのは、伊藤忠だけの問題なのか。証券市場全体の問題なのか、日本全体の問題なのかという問題意識を持っている」
「小粒だが無視できない存在」
グラウカスは日本では馴染みがない。11年の設立で、米カリフォルニアとテキサスに拠点を持つ。運用規模は1億ドル(100億円)以下と小さい。8月8日に都内で主要マスコミ10社程度の経済記者とインターネットを通じて記者会見した、調査責任者のソーレン・アンダール氏が共同創業者といわれている。過去5年間の投資実績22件を公表していて、対象は米国や香港市場に上場する中国企業が目立つ。