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鬼塚眞子「目を背けてはいけないお金のはなし」

社員の親介護問題が企業を滅ぼす?ついに企業倒産や業績急低下などの事例続出

文=鬼塚眞子/一般社団法人介護相続コンシェルジュ代表、保険・介護・医療ジャーナリスト
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公平性と透明性が必要

 こうしてみると、企業にとって難題続きのように思える新制度だが、従業員の申し出を断る術は、かろうじて残される見通しだ。それが、前述した「事業の正常な運営を妨げる場合を除く」という一文だが、ここにも慎重な対応策が求められる。

 たとえば、繁忙期に同時に従業員が介護休暇を申し出たとする。2人までならなんとかなるが、3人以上の申し出があれば、業務に支障が生じることが予想される場合、「3人のうちの1人を断ることができるのか」という疑問は湧いてくる。繰り返しになるが、「事業の正常な運営を妨げる場合」と明文化されれば、制度である以上、客観的な裏付けが不可欠となる。

 事前対策を怠り、裏付けや理由が従業員に提示できなければ、裁判に発展する可能性も考えられる。企業防衛の観点から社会保険労務士や弁護士と相談しながら、さらに実務に一歩踏み込んだ独自の制度を設ける必要性は不可欠だ。

 また、「Aさんの申し出はOKだったが、なぜBさんは認められないのか?」「前回はOKだったが、この時期はどうしてだめなのか」など、従業員間の不満が噴出することのないように、公平性や透明性に富んでいる必要がある。

企業の命運を握る

 
 ところで、企業の中には、「企業独自の制度を制定し、介護事業所などと提携しているから従業員の介護問題はクリアした」と思い込んでいる担当者も多い。独自の制度を制定したり、介護保険制度を学んだところで、介護に関するすべての問題は解消しないことは、十分に理解する必要がある。なぜなら、それほど複雑で多様な問題が待ち受けているからだ。

 もちろん、提携先の介護関係者は、十分にキャリアを磨きスキルを高めた方が対応してくれるだろう。しかし、介護保険制度ではできることとできないことがある。親族の感情問題、不動産、お金問題など、トラブルが多発するこれらに関しては対象とならない。

 さらに介護は従業員個人の問題だけではない。時として、企業の命運にかかってくることもある。

 オーナー経営者が介護状態になり、2人の息子が副社長と専務として勤務している企業があった。副社長の妻が義父であるオーナー経営者の介護を長年続けたが、専務夫婦は、ほとんどノータッチだった。

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23:30更新
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