ビジネスジャーナル > 企業ニュース > 円高地獄が再び日本企業襲う懸念浮上  > 3ページ目
NEW

円高地獄が再び日本企業を襲う懸念浮上…米国、景気後退局面入り間近の兆候

文=真壁昭夫/信州大学経法学部教授
【この記事のキーワード】, ,

 ひとたび経済がドル高に圧迫され始めると、米国政府は手のひらを返すようにドル高への警戒を示すことが多い。15年頃から、米国財務長官であるジャック・ルーは、主要国の金融緩和依存とドル高の進行に警戒を示し始めた。

 そこには、中国経済など海外経済の減速により、米国企業の収益がドル高に圧迫されているとの懸念があったとみられる。16年に入ると米政府高官は「為替相場は秩序立っている」と表明し、為替介入を示唆する日本をけん制している。現状、輸出振興などのために緩やかなドル安が望ましいのが米国の本音だろう。

 この結果、大手投資家はキャリートレードの持ち高(ポジション)を閉じ、ドル売り、円買いに転じている。これが、年初来のドル安・円高につながった部分は大きい。

日本経済に試練の円高進行

 
 今後、円の需給面、そして米国経済のファンダメンタルズの点から、円高が続きやすいのではないか。

 まず需給面について、日本では原油価格の下落による貿易収支の改善などによって経常黒字が積み上がっている。これは、国内の企業がドルなどの外貨を売り、円を買う必要があることを意味する。それが潜在的な円高圧力になっていることは忘れるべきではない。

 基本的に、円の為替レートは国内だけの事情で決まるほど単純ではない。それは、米国を中心とする世界経済の動向から影響される。経常黒字が確保されているということは、恒常的に自国通貨を買い戻す動き(円高圧力)があるということだ。円安が進むためには米国を中心に世界経済が上向き、投資家が積極的にリスクを取ろうとすることが重要だ。

 では、米国経済はさらなる回復を続けることができるか。まず、企業の設備投資意欲は低調だ。これまで多くの企業が投資を抑制し、人員採用を進めることで生産能力を増強してきた。しかし、4~6月期まで3四半期続けて米国の労働生産性はマイナスで推移し、企業の収益性は悪化している。

 米国の消費が盛り上がりづらいなか、企業が収益を確保するには人員の削減=リストラが必要になるかもしれない。そうなると、米国の雇用環境は悪化し、景気の先行きに対する懸念も高まりやすい。

 米国の景気循環の観点からも、さらなる景気回復は期待しづらい。第2次世界大戦後、米国の平均的な景気拡張期間は約5年だ。直近の景気のボトム(谷)は09年6月だ。そこから7年以上の景気回復が続いている。16年4~6月期まで4四半期続けて企業業績が減益だったことを考えると、景気はピークまで7合目程度といったところだろう。

円高地獄が再び日本企業を襲う懸念浮上…米国、景気後退局面入り間近の兆候のページです。ビジネスジャーナルは、企業、, , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!