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水野誠「マーケティングの進化学」

広島カープファンを急増させたメカニズム…プロ野球の「熱狂」から学ぶべきこと

文=水野誠/明治大学商学部教授
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 他のプロ野球球団も負けじと女性ファンの獲得に乗り出しているようです【註6】。ただし、ファンの熱狂が今後とも持続していかなければ、投資の元を取ることはできません。広島の場合、ファンの熱狂がもともとボトムアップに生まれた点に有利さがあります。では、なぜ広島ファンにそれが生まれたのかを考えるには、広島ファンの特性について深く調べてみる必要があります。

広島ファンにはどのような特徴があるのか

 私たちが行ったプロ野球ファンの調査では、巨人ファンは関東地方、阪神ファンは関西地方、広島ファンは中国地方の出身者・居住者が多いことが確認されました。応援球団が出身地や居住地に強く影響されるのは、別に驚くような話ではありません。

 マーケティング上重要なのは、それだけでは決まらない部分です。大阪で生まれ育ち、いまは東京に住み、広島に住んだことはなく親戚もいないが、熱狂的な広島ファンも存在するからです。

 広島ファンには、巨人・阪神ファンより平均年齢が低く、ファン歴が短かいという特徴があります。球場での観戦回数や性別を調整してもこの傾向は変わりません。これは、比較的最近広島ファンになった人が、巨人・阪神ファンに比べて相対的に多いことを意味しています。ファンの新陳代謝が進んでいるといってもよいでしょう。逆に巨人・阪神ファンは、このままいくと高齢化(エイジング)が進む可能性がなきにしもあらずです。

 調査の結果、この3球団のファンの間には、プロ野球に何を期待するかに差があることがわかりました。「遊び」を以下の4つの要素で分類する、カイヨワという社会学者の枠組みに沿って、期待する価値の差を探ってみることにしましょう。

(1)競争(アゴン)  …相手に勝利する喜び
(2)運(アレア)   …偶然・不確実性の喜び
(3)模倣(ミミクリ) …形式・型に従う喜び
(4)眩暈(イリンクス)…没我的な陶酔・恍惚

 巨人ファンがプロ野球観戦でもっぱら期待するのは、競争に勝つことです。特に「大差で勝つ」ことや「最後に勝つ」ことを重視しています。巨人ファンほどではないにしろ、阪神ファンにも同様の傾向が見られます。広島ファンもまた勝利を求めますが、その程度は巨人(あるいは阪神)ファンほどではありません(ただし「強い相手に勝つ」ことについては、広島ファンは阪神ファンと同様のこだわりが見られます)。

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