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ルディー和子「マーケティングの深層と真相」

「使い勝手悪い」楽天、アマゾンとの戦いを放棄か…ポイント大盤振る舞い戦術の限界

文=ルディー和子/マーケティング評論家、立命館大学客員教授
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小売業で顧客満足度を高めなければ衰退する

 楽天丸井が金融セグメントに注力するのは、正しい戦略だろう。だが、今のところ消費者の信頼感は本業である小売業、楽天市場で培われているのだ。ポイント会員というだけでなく、そのポイントを使って楽天市場や楽天トラベルで購買をしてもらう。そういった購買経験のなかで培われた信頼感があって初めて、金融サービスも継続して利用してもらえるようになる。

 そのような意味で、楽天市場の成長が落ちることを無視していては、第2のシアーズやテスコになる可能性がある。もちろん、楽天の三木谷浩史社長はその点には気がついており、低評価店の改善を促進することを宣言している。

 また、将来的にはAI(人工知能)によって、経費を抑えながらもサービスの向上をめざすと語っている。たとえば、楽天トラベルではAIが旅行先選択の相談に乗るといった具合だ。しかし、何よりもまず大切なのは、楽天市場サイトの使い勝手の悪さを改善することだろう。

 過去の歴史は、集客手段であった小売業の競争優位が失われたとき、顧客ベースが縮小していき、結局、小売業も金融業も衰退していくことを教えてくれる。

 もちろん極端にいって、金融業を本業にして楽天市場を縮小することもできる。アマゾンの配送サービスをまねしなくても、営業利益で勝つためには、本当に質の良い個性的店舗だけを集める必要がある。その場合、楽天市場が小さくなるのは避けられないだろう。

 日本のようにリテールバンキングが重要といいながら、相変わらず法人営業を中心としている都市銀行が多いなか、ダイレクトにコミュニケーションしていくほうが良質な金融サービスを提供できる可能性が高い。現に、日本経済新聞社が発表した「第12回日経金融機関ランキング」では、顧客満足度総合ランキングの1位は9年連続でソニー銀行だ。7位に住信SBIネット銀行が入っていることからみても、消費者とダイレクトにコミュニケーションしている金融業のサービスが評価されていることがわかる。ちなみに、楽天銀行は34位だった。

 小売業あるいは金融業、どちらを本業にするとしても楽天は顧客満足度を向上させる地道な努力を積み重ねる必要があるようだ。

 ちなみに、16年2月に発表された中期事業戦略では、ネット証券、クレジットカード、銀行、生命保険、電子マネー、スマホ決済等を含めた金融(フィンテック)事業の営業利益を20年までに今の2倍の1200億円規模にするとしている。これは、国内ECが目標としている1600億円とそれほど変わらない目標額だといえる。
(文=ルディー和子/マーケティング評論家、立命館大学客員教授)

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