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渡邉哲也「よくわかる経済のしくみ」

中国・習近平政権、崩壊の危機…国内の反発抑制のため日本領海侵犯を連発

文=渡邉哲也/経済評論家

習近平の「次が見えない」中国のジレンマ

 そうした外的要因に加え、中国国内では習近平国家主席自身が八方ふさがりの状況に陥っている。中国は南シナ海における領有権問題について、常設仲裁裁判所の判決を無視している上、東シナ海の尖閣諸島に大量の船舶を航行させて日本の領海に侵入を繰り返している。

 ここまで強硬な姿勢を貫くのはなぜかというと、そこで習主席が「一歩引く」という姿勢を見せれば、たちまち求心力を失うことになり、習政権の崩壊につながるからだ。習主席は中国人民解放軍の「軍区」を7つから5つに再編すると同時に「戦区」と改称するなど軍改革を行ったが、この改革も軍に対する強い指導力がなければできないわけで、その後、軍の掌握はなかなか進んでいないのが実情だ。

 どの国でもそうだが、軍隊をまとめる時に必要なのは外敵の存在である。軍隊というのは敵がいれば強くなるが、敵がいなければ目的がないため締まらない。そういう視点で見た時、中国が南シナ海や尖閣諸島の問題から手を引けば、軍の士気が低下する上、習主席に対する忠誠心も失われる恐れがある。

 本連載の中で繰り返し述べているように、中国は政治的に国際社会の中で孤立しており、経済政策もどん詰まりの現状がある。そんな中で軍の統率も取れなくなる事態になれば、それはそのまま習政権の瓦解に結びつく。

 そして、その時の最大の問題は「次が見えない」ということだ。中国共産党は集団指導体制をうたってはいるが、習主席は「虎狩り」と称して大々的な反腐敗キャンペーンを行った。党内の汚職などを一掃するというものだが、これによって習主席は敵対勢力を徹底的に潰し、その反動で大きな恨みを買っている状態でもある。党内に反発を生むと同時に、有力者を潰すことで「次の芽」を摘んでしまっている。

 これを、中国で繰り返されてきた国内の権力闘争の歴史の一部と見ることもできるが、これまでより格段に規模が大きく、中国の内外を取り巻く環境が変化していることを失念しているものだと思う。すでに右肩上がりの経済は期待できず、自由化により海外との関係も深まっている。「虎狩り」は、海外とつながる人材を奪ってもいるわけで、政策的混迷の原因にもなる。

渡邉哲也/経済評論家

渡邉哲也/経済評論家

作家・経済評論家。1969年生まれ。
日本大学法学部経営法学科卒業。貿易会社に勤務し独立。複数の企業を経営、内外の政治経済のリサーチや分析に定評があり、政策立案の支援、雑誌の企画監修、テレビ出演等幅広く活動しベストセラー多数、専門は国際経済から金融、経済安全保障まで多岐にわたり、100作以上の著作を刊行している。

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