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熊谷修「間違いだらけの健康づくり」

死亡・老化・がん等の病気リスクを決定づける「究極の」体内栄養があった!

文=熊谷修/人間総合科学大学教授

多機能たんぱく質の傑作

 健康の総合リスクには死のリスクはもとより、要介護リスク、主要死因のがん、心臓病、脳卒中、感染症や自殺事故のリスクも含まれる。メタボ対策では、循環器疾患という死亡リスクを高める一部の病気のみを標的にしたキャンペーンが行われている。これに対して血清アルブミンを高めるキャンペーンは、それよりも広範囲およぶ死亡リスクを除去することに貢献するのである。

 血清アルブミンは、食事で消化吸収したたんぱく質を活用し肝臓が合成する、人体が造り出す多機能たんぱく質の傑作といえる。その機能は多岐にわたり、血液中を流れるたんぱく質の約60%を占める。

 主な機能をいくつか紹介しよう。まずは、血流量のコントロール機能である。この夏も猛暑だった。となると、熱中症予防となる。実はこの熱中症リスクは血液中の血清アルブミン濃度と密接に関係している。血流量はからだの放熱効率を決めている。ちょうど自動車のラジエーターの冷却水の役目である。

 たんぱく質栄養が低下し血清アルブミンが低下すると、濃度を上げ浸透圧を維持しようと生体は反応し、血液量は減る。その結果、放熱効率は低下し熱中症リスクは高まるという仕組みだ。シニアの熱中症の大きな原因にたんぱく質栄養の低下があることが忘れられている。メディアが流すべき熱中症予防のためのレトリックは「食事をしっかり摂って、こまめに水分補給を!」が正しい。

 いま一つが炎症の予防作用である。血清アルブミンは体内に炎症像があると、消耗のため需要が高まり急低下する。血清アルブミンが低下すると心臓病や脳卒中のリスクが高まるのはそのためだ。医療従事者のなかには、血清アルブミンを炎症マーカーとして扱う者もいる。血清アルブミンが高値にあれば、体の炎症耐性が十分確保された安定した恒常状態にあるといえる。高負荷の運動時にも血清アルブミンは低下する。筋肉の崩壊が強い炎症であるためである。

血圧や血糖値より注意すべき

 さらに血清アルブミンは、抗酸化力を有するたんぱく質でもある。老化は酸化ストレスで速まるが、からだの酸化耐性を高めるのにも血清アルブミンを高くしておく必要がある。血清アルブミンが低下したたんぱく質栄養の低いからだでの運動負荷(とくに有酸素運動)は、老化を促進することになる。運動がからだの酸化を早め老化を促すとする主張があるが、この根底にはたんぱく質栄養が関係している。

熊谷修/博士(学術)、一般社団法人全国食支援活動協力会理事

熊谷修/博士(学術)、一般社団法人全国食支援活動協力会理事

1956年宮崎県生まれ。人間総合科学大学教授。学術博士。1979年東京農業大学卒業。地域住民の生活習慣病予防対策の研究・実践活動を経て、高齢社会の健康施策の開発のため東京都老人総合研究所(現東京都健康長寿医療センター研究所)へ。わが国最初の「老化を遅らせる食生活指針」を発表し、シニアの栄養改善の科学的意義を解明。介護予防のための栄養改善プログラムの第一人者である。東京都健康長寿医療センター研究所協力研究員、介護予防市町村モデル事業支援委員会委員を歴任

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