
「東京の図書館をもっとよくする会」の池沢昇氏は、新刊の全8回にわたる選書スケジュールをこう分析する。
「年末年始を除く多くの回では、毎週火曜日に選書リストがCCCから提出され、翌々日の木曜日に担当係が起案を作成し、金曜日に決裁が終了するというパターンです。第8回などは5887冊と、ほかの回の倍以上の冊数で、なおかつ水曜日が祝日にもかかわらず、通常パターン通り木曜起案で金曜決裁されています。決裁には10人を超える押印がなされていますが、新刊に関しては厳重なチェック体制が敷かれているとはとても言い難いと思います」
確かに、市教委の担当者と上役が、実質3営業日で数千冊のリストを丹念にチェックするのは、いくらなんでも無理がある。では、中古本部分だけを厳しく審査したのかといえば、必ずしもそうとは言い切れないと池沢氏は指摘する。
「第5回は、総数5631冊のうち中古本が1700冊ありますが、その12.2%にあたる208冊も受け入れ不許可となっています。しかし、図書館推進移転係は、リストを受け取った翌々日にチェックを終えて起案しています。果たして、それで十分な審査をしたのか疑問です」
実質2日程度で、中古本1700冊のリストを細かく審査するのは不可能だ。不許可とした理由も不明瞭で、とりあえず形だけ拒否したようにしか思えないと言う。
つまり市教委は、新刊は無条件で受け入れ、中古本に関しては当初から強い警戒心を抱き、審査内容のいかんにかかわらず、受入不許可を連発しているようにもみえる。
いずれにしろ、市教委は早くから図書館に大量の古本を納入することの不適切さを強く認識していたことがうかがえる。それにもかかわらず、刊行年の古い中古本の購入をすべて取りやめるといった有効な手立てを講じることなく、最後までCCCの選書を受け入れてしまったのである。市教委は、その点、市民から厳しく非難されてしかるべきだろう。
次回は、購入した蔵書の納入時の問題点を紹介したい。
(文=日向咲嗣/ジャーナリスト)