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新見正則「医療の極論、常識、非常識」

深刻な「熟睡できない」問題、どう解消?心配不要?睡眠薬は薬物依存に陥る危険性も

文=新見正則/医学博士、医師
深刻な「熟睡できない」問題、どう解消?心配不要?睡眠薬は薬物依存に陥る危険性もの画像1「Thinkstock」より

 今日は、睡眠の話です。“極論君”は、「睡眠の質は健康にとって大切な要素だから、すぐに寝られて、途中で起きることなく、そして熟睡感があるように心がけている。そのためには睡眠薬をどんどん使っている」と言います。

「どんな睡眠薬ですか?」と“非常識君”が尋ねます。極論君はお薬手帳を見て「ベンゾジアゼピン系の睡眠薬だ」と返事をしました。そこで、非常識君が「ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は、イギリス、カナダ、アイルランド、ニュージーランド、デンマーク、ノルウェー、スウェーデンなどでは薬物依存を防ぐために、通常は数週間以内の使用に限られているのですよ。そんな薬を常用して眠っても健康になるとは思えません」と言います。

 すると“常識君”がコメントします。

「ベンゾジアゼピン系薬剤は、ベンゾジアゼピン受容体に作用して睡眠作用を導きます。同じく抗不安薬も多くはベンゾジアゼピン系受容体に作用します。日本でたくさん処方されている抗不安薬も睡眠薬も、多くはベンゾジアゼピン系受容体作動薬です。同薬の使いすぎは、相当な問題です。まず、同薬は薬物依存を導きやすいのです。そして同じ量では有効性が薄れていき、だんだんと量が増えていきます。止めると離脱症状が生じることもあります。ですから、多くの国では安易な長期使用を規制する方向にあります。日本でも同薬のいくつかは4週間しか保険では処方できません」

 これを受け、非常識君が言います。

「熟睡感は健康にはそれほど重要ではないと思う。昔の映画で、刑事が被告に睡眠時間を与えないで尋問を続けて、そして自白に誘導する場面があります。確かに、白熱灯の下で覚醒状態を強制されると、人の頭は錯乱します。動物実験では、睡眠を剥奪するとその動物は死亡します。しかし、現代人の熟睡感不足の多くは、刺激から遮断された静かで暗い空間で、気持ち良い寝具に寝て、でも寝た感じがしないというものです。次の日に生活に支障がなければ、そんな熟睡感不足は無視するのが一番です。 気合いで乗り切るのが大切です」

依存症の危険性

 再び常識君がコメントします。

「現代人の不眠症の多くは、睡眠時間の誤認が実は多いのです。つまり実際は寝ているのに、本人が寝ていないと言い張るパターンです。脳波を測定しながら、本人の睡眠時間の自己報告と比べると、『寝ていない』と言いながら実は十分すぎる睡眠時間を取っていることが少なくありません。つまり睡眠時間の誤認が不眠症の一部または多くであるということです。

新見正則/医学博士・医師

新見正則/医学博士・医師

1959年生まれ
1985年 慶應義塾大学医学部卒業
1985年~ 慶應義塾大学医学部外科
1993~1998年 英国オックスフォード大学医学部博士課程
1998年~ 帝京大学医学部外科に勤務

 幅広い知識を持つ臨床医で、移植免疫学のサイエンティスト、そしてセカンドオピニオンのパイオニアで、モダン・カンポウやメディカルヨガの啓蒙者、趣味はトライアスロン。著書多数。なお、診察希望者は帝京大学医学部付属病院または公益財団法人愛世会愛誠病院で受診してください。大学病院は紹介状が必要です。

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