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ラオックス、危機的状況突入…突然の爆買い消滅で赤字転落、新店舗が半年で閉鎖

文=編集部
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ラオックス、危機的状況突入…突然の爆買い消滅で赤字転落、新店舗が半年で閉鎖の画像1ラオックスの店舗(撮影=編集部)

 高級時計や家電、ブランド品を大量に購入してきた中国人観光客の爆買いに急ブレーキがかかった。4月以降、潮が引くように彼等はいなくなった。

 中国人観光客御用達の免税店チェーン、ラオックスの2016年12月期第2四半期(1~6月)の連結決算の売上高は350億円。前年同期に比べて23%減った。営業利益は91%減の4億5400万円(前年同期は50億円)、最終損益段階では4億6400万円の赤字(同46億円の黒字)に転落した。

 業績の悪化に伴い16年12月期(通期)の業績予想を下方修正した。売上高は従来予想の1000億円から350億円減額して650億円、営業利益は12億円と従来予想を57億円下回る見通しだ。落ち込みがあまりに激しいため、最終損益は「予想が困難」として開示しなかった。

 家電量販店だったラオックスは09年に中国の小売り大手、蘇寧電器集団(現・蘇寧雲商集団)の傘下に入った。その後、ブランド品や化粧品なども扱う免税店に転換。中国人観光客の爆買いで業績が急上昇した。

 勢いに乗り全国に免税店を展開。15年1月に17店だった店舗数を今年7月には41店に拡大した。戦線が伸びきったところで“爆買いバブル”が弾けた。全店の売上高は5月が前年同月比44%減、6月が同49%減、7月が同44%減と激減した。

 出店政策は迷走中だ。7月下旬、札幌市の小型店を新規開店からわずか半年で閉鎖、同じく鹿児島市の小型店を新規開店から5カ月という超短期で閉鎖した。また鹿児島では、予定していた新規出店も中止した。

 不振の理由ははっきりしている。中国政府が今年4月から、中国人が海外で購入した商品を中国へ持ち込む際の関税を引き上げたからだ。事実上、免税だった個人輸入扱いの品物に一般貿易並みの税金を課した。そのため、高級時計には最大で60%の税金が加算された。

 ブランド品などを日本で購入し、中国でネット通じて転売する代購(代理購入)と呼ばれるブローカーは採算が合わなくなり姿を消した。つまり、ブローカーが爆買いの主役だったという見方もできる。

インバウンドの代表銘柄、コメ兵も赤字転落

 爆買いバブルが弾け、インバウンド(訪日観光客)銘柄を直撃した。中古のブランド品などを販売するコメ兵も赤字に転落した。

 コメ兵は1947年、名古屋市でたった5坪の古着屋「米兵」を創業した。創業者一族が1897年に米屋を創業し、名前が「兵次郎」だったことにちなんで、こう名付けた。1987年に社名をコメ兵に変更。中古品を買い取り、店頭で売り始めた。

 家電、カメラ、家具、パソコンなどを幅広く扱っていたが、今は宝石や腕時計、バッグなどの中古品の販売が主力になっている。03年にジャスダック、04年に東京証券取引所2部、名古屋証券取引所2部に上場した。創業の地、名古屋を中心に東京、埼玉、千葉、横浜、長野、大阪、神戸、広島に41店舗を構えている。

 多数の外国人観光客がコメ兵を訪れ、インバウンドの代表銘柄となった。株価は15年1月21日に4095円の上場来高値をつけた。

 業績のピークは15年9月中間決算。売上高は前年同期比7%増の209億円で上半期としては過去最高を更新した。訪日外国人向けの免税品売り上げが同27%伸び、全体を押し上げた。免税品の売上高は全体の15%を占め、なかでも東京・新宿店では免税品の割合が全体の30%に達した。この数字は、免税店を本業とするラオックスを除けば、小売業では屈指の水準だ。

 インバウンド消費の失速が明らかになった16年に入ってからは、売上高が前年同月比で2ケタを上回る減少が続いていた。4~6月期連結決算の売上高は12%減の91億円、営業損益は5500万円の赤字(前年同期は6億9200万円の黒字)、最終損益は5800万円の赤字(同3億8700万円の黒字)に転落した。

 株価は8月26日に年初来安値の897円に沈んだ。インバウンド消費への期待から4095円へと暴騰した時に比べ8割安の水準だ。インバウンド特需は終焉した。

シチズンHD は量販店、免税店向けの時計が落ち込む

 シチズンホールディングスは17年3月期通期の連結決算の業績見通しを下方修正した。売上高は当初見通しの3400億円から3190億円に210億円減額。営業利益は285億円から215億円に70億円、純利益は190億円から125億円に65億円をそれぞれ減額した。量販店や免税店でインバウンド消費が想定以上に落ち込んでいるためだ。

 16年4~6月期の連結決算の売上高は8%減の766億円、営業利益は27%減の46億円、純利益は55%減の23億円と、大幅な減収・減益となった。

 主力の時計の売上高が13%減の372億円、営業利益は49%減となったことが響いた。通期の時計の営業利益は205億円を見込んでいたが、150億円まで下振れする見通し。時計の営業利益の減少分が全体の下方修正の大半を占める。

 三越伊勢丹ホールディングス(HD)は、16年度中にオープンを予定していた東京・新宿の大型免税店の開業を延期する。百貨店の免税店の売り上げが激減しているためだ。

 三越伊勢丹HDは空港型免税店事業に力を入れており、今年1月に消費税だけでなく関税や酒・たばこ税も免税される空港型免税店「ジャパン・デューティー・フリー・ギンザ」を三越銀座店に開業した。新宿の免税店は首都圏2号店となる予定だった。インバウンド消費を当て込んだ空港型免税店事業は出足から躓いた。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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