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もんじゅ、ずっと運転停止でも計1兆円税金投入…廃炉でさらに3千億、日本の原子力政策破綻

文=平沼健/ジャーナリスト
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 もんじゅは、稼動していないにもかかわらず維持費が年間200億円もかかっており、再稼動にも莫大な費用がかかるため、廃炉は妥当な判断だろう。だが、JAEAが12年に発表したところでは、廃炉にするには原子炉の解体など30年間で約3000億円の費用がかかるという。ナトリウムを使用していることで、一般の原発を廃炉にするより高くなるのだ。

 政府は、もんじゅ廃炉後も高速炉の研究開発は継続するという。これは原子力政策の失敗を認めないための悪あがきとみる向きも多い。なぜならば、政府はこれまで原発で核廃棄物が生じても、それが再び燃料になるという前提において原子力政策を推進してきたからだ。

 また、再利用できないとなれば、原発の存在そのものに疑問を投げかける動きが活発になるだろう。核燃料のリサイクルができない原発は「トイレのないマンション」にたとえられる。捨てることもできない排泄物=使用済み核燃料がたまり続ける現実を認めることになってしまう。さらに、14年までに投入された事業費の総額は、9847億円に上る。このすべてが無駄だったとすれば、責任の所在を問う声が高まるのは不可避だ。

 研究継続によって、「核燃料サイクルは失敗したわけではない。可能性はある」と言い訳できる状況をつくるのだ。

地元の既得権益

 廃炉報道を受けて、もんじゅのある福井県敦賀市の渕上隆信市長は、松野博一文部科学大臣に対し「一定の成果が上げられないまま撤退という判断になれば、30年の協力はなんだったということになりかねない。地元の期待を裏切らないでほしい」と存続を強く求めた。

 これは、もんじゅがあることで地元に巨額の利益をもたらしているためだ。渕上市長の言う「地元の期待」とは、敦賀市にもたらす既得権益を指すといえる。

 たとえば、99~14年度までにもんじゅの固定資産税として総額412億円が敦賀市に納められている。また、97年度に「リサイクル研究開発促進交付金」として約24億円、08年度には「高速増殖炉サイクル技術研究開発推進交付金」として約20億円が国から敦賀市に交付されている。さらに、研究開発費として毎年約4億円が計上されている。

 このように、研究に携わる人たちや従業員の雇用という面からも、もんじゅ廃炉や研究中止に反対する力は強く働くのだ。
(文=平沼健/ジャーナリスト)

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