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ツタヤ図書館、CCCが虚偽の業務完了報告の疑惑浮上…市もずさんな検査で完了承認か

文=日向咲嗣/ジャーナリスト

 鳴り物入りで受注した仕事が、納期に間に合わなかった――。

 そんなとき、あなたの会社では、どうするだろうか。当然のことながら、しかるべき立場の人間が顧客に対して謝罪し、再発防止を約束するとか、担当責任者の降格処分等が行われるのが世間の常識だろう。

 ところが、仕事を遅延させた受注企業が謝罪もせず、発注サイドも何事もなかったかのように委託費を全額支払っているとしたら、どう思われるだろうか。

 9月14日付当サイト記事『ツタヤ図書館、大量の新刊本がオープン日に間に合わず…豪華棚にダミー本並べる』で報じた通り、宮城県・多賀城市立図書館を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が選書した新刊蔵書の納本が、3月21日のリニューアルオープンに間に合わなかったことが筆者の独自調査によって判明した。

 菊地健次郎市長と増田宗昭CCC社長が出席して行われた派手なオープニングセレモニー当日には、CCCが選書した約2万1000冊の新刊図書は、1冊も配架されていなかった。CCC自慢の高層背面書架に並んでいたのは、それまでに購入された大量の中古本、移転前の旧図書館スタッフによって選書された図書、中身が空洞のダミー本ばかりで、運営者による大量の新刊は納本が間に合わなかったのだ。

「東北随一の文化交流拠点」との謳い文句を掲げ、鳴り物入りで登場した新図書館にもかかわらず、価値のなくなった中古本ばかりを並べて新装開館した事実がおおやけになっていれば、運営者の資質が問われる事態となっただろう。

 問題は、このような不祥事があった事実が、市民に一切知らされていないことだ。また市民は、開館日に多くの新刊に触れる機会を奪われ、実害を被ったともいえる。そして何より、役所の事務上、完了していないはずの業務が完了したものとして委託費を支払われていたことだ。

 つまり、役所と事業者による「偽装行為」が行われていたのではないかという疑惑が出てきたのである。

実際に配架したのは5月中旬か

 下の書類は、運営者となるCCCが新図書館の開館準備業務を完了したとの報告書と、運営を委託した多賀城市が四半期ごとに行っている検査の報告書である。検査対象期間は2015年4月1日~16年3月31日までで、これによると3月31日、最後の四半期の業務が完了したと市の担当者が確認している。

ツタヤ図書館、CCCが虚偽の業務完了報告の疑惑浮上…市もずさんな検査で完了承認かの画像2CCCが多賀城市に提出した「業務完了報告書」
ツタヤ図書館、CCCが虚偽の業務完了報告の疑惑浮上…市もずさんな検査で完了承認かの画像3多賀城市が業務の完了を承認した「検査報告書」

 前回記事で報じた通り、新装開館する図書館向けとして購入した計3万5000冊に上る追加蔵書のうち、2万1000冊の新刊図書は「受入決定日」が3月24日となっている。受入決定されなければ、ラベルやブックカバー、ICタグなどの装備をして配架できない。つまり、3月31日に業務完了確認されているということは、オープンには間に合わなかったものの、24日以降に急ピッチですべての作業が施されて31日までに納本されたのだろうと筆者はとらえていた。

 ところが、納本が遅れていた新刊2万1000冊が最終的に装備を終えて配架されたのは、それよりも1カ月半も後の5月中旬だった可能性がある。

 下の図は、前回記事を受けて情報提供していただいたもので、多賀城市立図書館における新刊図書の登録件数の推移である。これをみると、4月23日から徐々に登録件数が増えていき、5月14~16日にピークを迎えている。つまり、この3週間ほどで大量の新刊が登録されているのだ。

ツタヤ図書館、CCCが虚偽の業務完了報告の疑惑浮上…市もずさんな検査で完了承認かの画像4

 3月31日時点で開館準備業務がすべて完了していたということは、新刊2万1000冊の納品を受け、装備作業も終えていたはずだ。だが、なんらかの事情があって登録を遅らせていたということだろうか。

 ここまでの流れを見ると、リニューアルオープンに間に合わなかったにもかかわらず「完了した」という虚偽の報告書を作成したのではないかという疑念が湧いてくる。

 そこで、多賀城市教育委員会に確認してみた。すると、「最終的に、いつ(購入した新刊分の)配架が終わったのかまでは正確に記録しておりませんが、一部は4月以降も続きました」と回答があった。しかし、「検査報告書に3月末で完了となっているのはどういう意味か」と追及したところ、「検査報告にそう書かれているのだとしたら、3月31日に納本された残りは、すべて終わっているはずです」と前言を覆した。

 さらに、5月中旬まで大量新刊登録処理がなされていることとの整合性をただすと、「そのようなデータは把握しておりません」とお茶を濁した。

 多賀城市立図書館においては、本サイト上でたびたび追及しているように、極端に市場価値の低い中古本を大量に購入するなどの不適切な選書が批判の的になっている。その上、こうした事務手続きですら偽装が疑われるような状況だ。これでは、いつまでたっても多額の税金負担をしている市民が、「わが街の図書館はすばらしい」と胸を張れるようにはならないのではないか。

 4月以降にも新刊の登録が続いていた実態について、「東京の図書館をもっとよくする会」代表の大澤正雄氏は次のように指摘する。

「図書館開館の場合など、事業の大きさによっては年度をまたがって図書購入するといった事業が継続する場合はあります。しかし、その場合は前の議会(主に12月議会)で『債務負担行為』といって、複数年度にわたる事業執行(業務や会計処理)について承認を受けなければなりません。

 多賀城市では、その承認を受けてないようなので、年度中に発注した物品・備品は年度内に納品および支払いが完了しなければいけません。3月開館ですので、年度を越えて納品というのは事務的、常識的に考えられません。また、開館に際して新刊本が1冊も用意されないというのも一般的にいって理解に苦しみます」

 リニューアルオープンまでに新刊を配架できなかったこと、3月末までに業務を完了していなかったこと、この疑惑について市教委とCCCはつまびらかにすべきだ。事実を隠蔽するなど、もってのほかである。
(文=日向咲嗣/ジャーナリスト)

日向咲嗣/ジャーナリスト

日向咲嗣/ジャーナリスト

1959年、愛媛県生まれ。大学卒業後、新聞社・編集プロダクションを経てフリーに。「転職」「独立」「失業」問題など職業生活全般をテーマに著作多数。2015年から図書館の民間委託問題についてのレポートを始め、その詳細な取材ブロセスはブログ『ほぼ月刊ツタヤ図書館』でも随時発表している。2018年「貧困ジャーナリズム賞」受賞。

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