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鷲尾香一「“鷲”の目で斬る」

某上場企業、突然他社の株式大量取得で子会社化…役員報酬30億円提示、即取り下げ

文=鷲尾香一/ジャーナリスト
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 これに対して、8月15日にソフトブレーンが発表した「フュージョンパートナーとの業務提携等に向けた協議開始に関するお知らせ」では、次のように書かれているのみだ。

「当社の主要株主である筆頭株主及びその他の関係会社であるフュージョンパートナーより、業務提携の協議を行うことについて提案を頂きました。そこで、当社は、フュージョンパートナーとの間で、情報システムに関するサービス、ソリューション及びプロダクトの開発・販売等において幅広く業務提携等を検討して参ります」 

 両社間のこの温度差が、今回の連結子会社化に対する両社の姿勢の差を如実に示している。

大幅な好業績予想

 6月が決算期のフュージョンは、8月15日に2016年6月期決算を発表した。なお、同期から同社は国際会計基準(IFRS)を適用している。同期連結決算は、売上収益が前期比20.4%増、営業利益が同14.0%増だったのに対して、当期利益は同129.6%増に跳ね上がった。これは、持分法適用会社であったエイジアの株式売却益5億2700万円などによるものだった。

 一方、決算発表のギリギリのタイミングでソフトブレーンを連結子会社化したことで、17年6月期の連結業績予想は、売上収益が102億円(前期比278.6%増)、営業利益37億円(同499.8%増)、当期利益29億5000万円(同255.0%増)と大幅な好業績予想となった。

 その内訳は、102億円の売上収益予想のうちフュージョン分は32億円、ソフトブレーン分が70億円と連結会社化したソフトブレーンに負うところが大きい。株式市場関係者の間からは、「ソフトブレーンの連結子会社化は、決算の“お化粧”のため」との声が聞かれるほどだ。

 フュージョンの一連の動きは、当然ながら法律に則り行われており、違法性がないことはいうまでもない。しかし市場関係者の間からは、次のような声も聞こえる。

「業績予想を大幅にかさ上げするために、友好的TOBという制度があるにもかかわらず、それを使わずに、当初は密かに株式を取得する方法で他社を子会社化するという行為は、企業倫理の面から疑問を感じる」

 一方、ソフトブレーン側はフュージョンによる子会社化を防ぐ方法はなかったのであろうか。

 M&A(買収・合併)が盛んに行われる現在では、他社による買収を防衛するため、未然にさまざまな方策を整備している企業も多い。たとえば、よく知られたものとして「ポインズンピル(毒薬条項)」は、第三者が議決権の一定割合を取得した場合にその他の株主が市場より安い価格で株式を取得できる権利(新株予約権)を事前に付与するというもの。これにより、買収者等の持株比率を低下させることができる。

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