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ソフトブレーンはこうした防衛策を整備していなかったが、M&Aが当たり前になった今、規模の大小にかかわらず企業は事前に買収防衛策を整えておく必要があるといえよう。
取り下げられた定款変更
実は、以前にもフュージョンは同じような動きをしている。それは、16年6月期決算の当期利益を急増させた保有株式の売却が行われたエイジアだ。
販促支援ソフトを展開するエイジアは、15年6月末にフュージョンが株式25.58%を取得し、持分法適用会社化された。15年6月期のフュージョンの決算短信には、「本年6月にエイジアの株式を議決権割合で30.4%まで取得したため、同社は当企業集団において持分法適用関連会社となりました。同社とは、業務提携に向けた検討を行っております」と記載されている。
その一方で、エイジアが16年6月30日に発表した「支配株主等に関する事項について」というニュースリリースには、「同社(フュージョン)による当社の事業上の制約はなく、当社は独自の経営判断で事業運営を行っており、当社の経営には独立性が確保されていると考えております」と記載されている。
フュージョン側は業務提携に向けた検討を発表したが、エイジア側は事実上、これを拒否。結果、フュージョンはエイジア株を手放し、これを原資の一部としてソフトブレーン株を大量に購入した。
また、フュージョンは8月30日、株主総会に向けた議案を提示した。そのなかには、12月1日 から社名をスカラに変更することに加え、一部定款の変更が含まれている。その定款変更は、以下の通り。
(1)会社の取締役は10名以内から5名以上に
(2)取締役の報酬、賞与その他職務執行の対価として会社から受ける財産上の利益(以下「報酬等」という)は、年額5億円以内から年額30億円以内に
(3)監査役は、5名以内から3名以上に
(4)監査役の報酬等は、年額1億円以内から年額3億円以内に
しかし、この定款変更は9月8日になぜか取り下げられ、商号変更だけとなった。
今回のソフトブレーンの子会社化、そして上記定款変更の提示と取り下げの理由についてフュージョンに問い合わせたところ、期日までに回答を得られなかった。
(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)