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「バカ高いウナギ」味のナマズの蒲焼きに絶賛の嵐!5百円で普及の可能性、開発7年間の死闘

文=青柳直弥/ライター
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「バカ高いウナギ」味のナマズの蒲焼きに絶賛の嵐!5百円で普及の可能性、開発7年間の死闘の画像1ウナギの蒲焼き(「Wikipedia」より/Opponent)

 ニホンウナギが2014年に絶滅危惧種に指定されて以降、価格が高止まりしているウナギ。ビタミンやミネラルを豊富に含むため、古くから日本人のスタミナ食として親しまれてきたウナギだが、近年はスーパーマーケットでも100~200グラムの蒲焼きが2000~3000円にまで高騰。うな丼も、松竹梅の3段階のうち最低ランクの梅でさえ、庶民には手が出せない高級品となってしまっている。

 そんななか、この高すぎるウナギの代用品として近畿大学が開発したのが「ウナギ味のナマズ」だ。近大といえば、02年にクロマグロの完全養殖に成功し、「近大マグロ」をヒットさせた実績もある。今年7月30日には、東京・銀座と大阪の直営料理店で「ウナギ味のナマズ」の限定販売も実施した。

 しかし、海外はともかく日本では、まだナマズに食材としてのなじみがないのも事実。「泥臭い」といったネガティブなメージもあり、ウナギのように脂が乗っているとも思えない。ナマズは、本当にウナギの代用品になれるのか。

ウナギ食はコウノトリを食べるのと同じ

 そもそも、ニホンウナギはどのくらいのレベルの「絶滅危機」にあるのだろうか。

「極端にいうと、今ニホンウナギを食べることは、国の特別天然記念物に指定されているコウノトリを食べるのと同じです」

 そう話すのは、「ウナギ味のナマズ」を開発した近大世界経済研究所の有路昌彦教授だ。有路教授によれば、現在、ニホンウナギは完全な保護を行っても種を維持できるかどうかわからないくらいの危機水準にあるという。この状態から絶滅危惧種に指定され、その後、徹底した保護措置をとっていないもので資源が回復して安定したケースはない。このままでは、ニホンウナギに残された道は「完全に絶滅」「絶滅危機の状態のまま」のいずれかになってしまう。

 そこで始められたのが、「ウナギの代わりにナマズを蒲焼きにする」という研究だ。しかし、なぜナマズでなければならなかったのか。

「『ウナギ味のナマズ』の研究に着手したのは、09年にウナギ養殖業者らの会合で『ウナギの代わりになる魚はいませんか?』と相談されたことがきっかけでした。それから、いろいろな淡水魚を川や湖で獲ったり全国の養殖業者から取り寄せたりして、蒲焼きにして食べてみたのです。ブラックバスの蒲焼きも試食しました」(有路教授)

 その結果、さまざまな魚類のなかで、唯一ウナギの代わりになりそうだったのがナマズだったという。また、ウナギ養殖業者が新たな設備投資を行わずに済むように、従来の施設をそのまま流用できる魚であることも考慮された。その点でも、「温水性の淡水魚」で皮にウロコのないナマズが最適だったという。

 アメリカ南部やヨーロッパ、アフリカでは、ナマズは日常的な食材として知られ、ナマズのフライのファストフードも人気が高い。ベトナムや中国は、それらの国にナマズを輸出する生産国として有名だ。江戸時代以前は、日本でも貴重なたんぱく源として重宝されていた歴史もある。ナマズをご当地グルメとする「なまずの里」の埼玉県吉川市をはじめ、日本各地にはナマズ料理の専門店も少なくない。

 とはいえ、ナマズを蒲焼きにすれば即ウナギの代わりになるというわけではない。当たり前の話だが、ナマズとウナギでは根本的に味が異なるからである。

「ナマズをウナギの味に近づけるために、さまざまな試行錯誤を繰り返しました。もっとも苦労したのは、エサの配合です。魚種を変えるにはエサの開発が必要ですが、最初から専用のエサをつくると高コストになります。そこで、既存の配合飼料300種類のなかから成分の組み立てで7種類を選び、ナマズの成長に合わせて組み合わせを最適化させたのです。その作業が非常に困難でした。ナマズのにおいの原因を突き止めるため、あえてにおいがきつい天然ナマズの試食も繰り返しました」(同)

「ウナギの代用にはならない」という声も

 そうして7年がかりで開発したのが「ウナギ味のナマズ」だ。今年6~8月まで、関西国際空港を拠点とする格安航空会社「ピーチ・アビエーション」で機内食として提供されたのを皮切りに、前述のように、7月30日には銀座と大阪で限定販売を実施。また、大手スーパーのイオンでも、一部店舗で計7000食の期間限定販売が行われた。

 筆者は残念ながら食べることができなかったが、店舗での販売に立ち会った有路教授によると、お客さんの反応は上々だったようだ。

「一番多かったのが『これはこれでおいしい』という声です。『ウナギの蒲焼きを食べたい』というニーズに応えるために開発した『ウナギ味のナマズ』の蒲焼きのおいしさに気付いてもらえたことは、評価できると思っています。コストや生産の効率化という面では課題が残りますが、私たちの自己採点では、現在の味の評価は90点ぐらいにはなっています」(同)

 その一方、インターネット上にアップされたイオンの試験販売のレポート記事を読む限り、「ウナギ味のナマズ」に対して厳しい意見があるのも事実だ。

「味は、ウナギではないです。サンマの蒲焼きともまた違って、白身魚であるタラに甘いタレをかけたような味がします。ウナギが大好きな人にとってみたら、やっぱりウナギとはいえません」

「これは、いうなればサンマの蒲焼き味のナマズ。サンマの蒲焼きよりは確実にウナギに近いものの、比率でいうならサンマ度80%、ウナギ度20%ぐらいなので、現段階では絶対に『ウナギの代用にはならない』といっていいだろう」

 これに対して、有路教授は、ネット上の否定的意見にこう説明する。

「これは、店頭で調理したものではない『調製品』に対する声ですね。現段階の調製品は原料に2回の冷凍処理が入るので、今の処理だとコラーゲンが崩れてしまい、そのため弾力が不足してしまっています。逆に、冷凍処理をしていない生のナマズを使った店頭調理はコラーゲンが崩れないため、お客様の7割が良好な反応でした。現段階の調製品には、やはり否定的な意見も多くあると思いますが、冷凍処理が1回になるように工程を開発中です。」(同)

 つまり、サンマっぽくなるのは冷凍処理を数回行ったためで、「ウナギ味のナマズ」の味そのものは悪くないというわけだ。とすると、今後、大量生産してスーパーに並べるには冷凍処理など加工プロセスも重要になりそうだが、実用化にはほかにも課題があるという。

「今は実用化のためのレールができただけで、現状の供給量では、小売店、飲食業からの需要を1%も満たせていません。いかに効率化して生産量を拡大できるかが、今後の大きなテーマです。最終的な目標は、飲食店などでナマズの蒲焼きをワンコイン(500円)で提供できるようにすること。来年の夏には今年の10倍の供給を目指します」(同)

 来年夏の「土用の丑の日」は、7月25日と8月6日の2回。ウナギが大好きな日本人のひとりとして、幻となりつつあるウナギに代わり「ウナギ味のナマズ」の蒲焼きが真の完成を見る日を、切に願うばかりである。
(文=青柳直弥/ライター)

青柳直弥/フリーライター

青柳直弥/フリーライター

出張ホスト斡旋、ナンパ代行など、20代前半のほとんどをアンダーグラウンドな世界で過ごしたのちに出版業界入り。現在は、様々なジャンルでフリーライターとして活動中。

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