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永濱利廣「“バイアスを排除した”経済の見方」

日本経済、深刻な負のスパイラル突入の兆候…移民拡大による労働力確保&納税増が不可欠

文=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト

 足元では円高による影響も避けられないが、インバウンドを取り込める業界にとって東京オリンピックはプラスの要素だろう。鉄道では「ななつ星in九州」などの豪華列車が好調だが、国内需要のみならず、インバウンドの取り込みも期待できる。ただし、長期的にみると国内は人口減少という足かせがあるので、国内の需要の減少をインバウンドで補う、というのがせいぜいだろう。

 こうした点で恩恵を受けることが期待できる業界を具体的に挙げれば、「建設・不動産」だろう。東京オリンピックでも一定のインフラ整備が行われるし、熊本地震など、被災地にもインフラや住宅の需要がある。

 政策関連でも、給料に関わるいくつかの業界が挙げられる。まず1点は、「介護士」や「保育士」。慢性的な人手不足で高齢者の受け入れ先がない、待機児童が解消できないといった構造的な問題に直面しており、政策的に賃金引き上げが図られる。

 ただ、もともとの水準が低く、介護では40歳時平均年収が382万円と、ほかの業界と較べて低年収である(『会社四季報 業界地図 2016年版』<東洋経済新報社>より)。水準が低いところからの小幅な賃上げ、ということであり、必ずしも「給料が上がる=高収入になる」ということではない。

 また先ごろ政府が閣議決定した「ニッポン一億総活躍プラン」では、「同一労働同一賃金」が目玉になっている。非正規雇用であっても、同じ仕事をしているなら賃金を正規雇用者と同じにする、つまり、非正規と正規の賃金格差をなくす、ということである。これが進めば、非正規として働いている人の多くは給料が上がる、ということになるだろう。逆に、非正規の人の賃金を上げるため、正規雇用の人の賃金は上がりにくくなる、という側面は否めない。

移民受け入れ拡大

 ただ、長期的には人口減少が給料に響く可能性は非常に高い。ここ数年、一部のサービス業では人手不足に悩まされており、飲食業などではアルバイトの時給を上げている例もある。人口が減れば仕事にあぶれないと考える人もいるが、それは一時的なことであり、人口減少によって消費が減ることのほうがはるかに問題は大きい。

 消費が伸びなければ生産の必要性が下がるし、高齢者の割合が増えることで現役世代の社会保障費負担が増し、ますます消費は落ち込むという負のスパイラルが待っている。日本では抵抗が強いが、移民を受け入れて労働力を確保し、その人たちにも消費してもらう、納税してもらう、社会保障費を負担してもらう、ということを本格的に考える必要があるのではないだろうか。
(文=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト)

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