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高井尚之が読み解く“人気商品”の舞台裏

星野リゾート、破綻旅館をことごとく再生&売上爆増の驚愕手法…毎晩お祭り、苔を活用…

文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント
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奥入瀬渓流ホテルは、東北のリゾート施設としては規模が大きく189室あります。以前は大宴会場やカラオケスナックも備え、団体旅行で来られるツアー客向けの施設でした。それが現在は40代から60代の個人旅行のご夫婦が中心です。そうした顧客層と施設のギャップを解消するため、徐々に中身を見直してきました。キーワードに『渓流スローライフ』を掲げて、癒しを求め、のんびり過ごしたい顧客ニーズに合わせた施設に変えたのです」(同)

 古風だった和室を現代風の和室にリニューアルし、食事には「青森ヒバの香蒸し膳」や「石焼牛の食べ比べ膳」など地元色も打ち出した。こうした活動が評価されて宿泊客が増えていき、同ホテルの15年の売上高は17億円にまで伸びた。好調な理由のひとつには、なじみの薄かった苔を浸透させる創意工夫もあった。

 たとえば、無料プログラムの充実を図り、早朝の奥入瀬渓流で目覚めのコーヒーを飲む「渓流モーニングカフェ」や、夜には「森の学校」という奥入瀬の自然を伝える授業も開催する。多彩なメニューを用意した結果、宿泊客の約3割が、こうしたプログラムに参加するようになった。

1年中「夏祭り」で訴求する青森屋

 青森の自然で訴求する奥入瀬に対して、青森の文化で訴求するのが「青森屋」(同県三沢市)だ。その代表例が施設内のレストラン「みちのく祭りや」だろう。

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 同レストランでは、毎夜イベントが行われる。「青森ねぶた」「弘前ねぷた」「八戸三社大祭」「五所川原立佞武多(たちねぷた)」の青森四大祭りをテーマにした催しで、実際に使われた山車も用いたショーが始まるのだ。司会者は津軽弁で挨拶し、それを見ながら宿泊客が取る夕食は、青森の旬の食材を5段せいろに詰め込んだ料理だ。ステージで津軽三味線が演奏された後、青森屋の従業員による祭り囃子が披露される。

 会場の宿泊客は2台の山車が練り歩くのを見ながら食事を楽しむ。こうした青森一色で訴求したショーのフィナーレを飾るのが、従業員と一緒に宿泊客も参加する青森ねぶた祭りの跳人(はねと)体験だ。「ねぶたやねぷたは、もともと青森の夏の風物詩ですが、これを1年中行うことで看板イベントに定着。リピーターも増えています」(青森屋総支配人の渡部賢氏)

 筆者が8年前に取材した当時の総支配人は、自ら毎晩、一緒に踊ることで宿泊客にも従業員にも活動を促していたが、現在は「従業員が自発的に踊るので、私が毎日率先して踊る必要はなくなりました」(同)という。従業員の意識も深まったようだ。

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、(株)日本実業出版社の編集者、花王(株)情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、大企業・中小企業の経営者や幹部の取材をし続ける。足で稼いだ企業事例の分析は、講演・セミナーでも好評を博す。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。これ以外に『なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?』(同)、『「解」は己の中にあり』(講談社)など、著書多数。

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