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熊谷修「間違いだらけの健康づくり」

老後の認知症&早期死亡リスク高い人に、ある共通点が判明

文=熊谷修/人間総合科学大学教授

 まず初回調査時に血清アルブミンを測定し、同時に認知機能の低下がないかをチェックし、1年後に同じアンケート項目で再チェックする。このデータは認知症という病気の発症リスクをみているのではない。加齢に伴う認知機能のわずかな低下が平均的なものか、それより大きい低下なのかのチェックである。わずかな衰えを早期にスクリーニングし、老化による認知機能の低下なのか、認知症に至るかもしれないケースなのかモニターし見極める取り組みからもたらされた、貴重なデータである。

 初回調査時の血清アルブミン値にもとづき、4.0g/dL以下、4.1~4.2g/dL、4.3g/dL、 4.4g/dL以上のグループに分け、認知機能の低下が平均的水準を逸脱した者の出現リスクを比較している。

 4.0g/dL以下、4.1~4.2g/dL、4.3g/dLのグループまでは同水準のリスクであったが、4.4g/dL以上のグループになると、約23%のリスク低下が認められた。このような関係は抑うつ傾向の出現リスクでも同じように認められる。シニア世代の心の健康度を高く保つのにも、良好なたんぱく質栄養レベルが欠かせないことがわかる。

 この大規模なシニア集団のデータを見ると、血清アルブミン値が4.4g/dLあるいは4.5g/dL程度から総合的な健康リスクが低下することがわかる。

 似たような研究成果は、欧米諸国からも発表されている。例えばオランダのアムステルダム在住の元気シニアの研究は、筋力指標の握力低下と血清アルブミンの関係を3~6年間縦断観察しており、4.3g/dL以上でもより高いグループほど、低下リスクが抑えられることを示している。

 筆者らは日本のシニア集団で筋力指標として最大歩行速度を観察しているが、4.3g/dL以上の水準でないと低下リスクは抑えられないことを確認した。オランダのシニア集団は、日本の集団より血清アルブミンの平均値がとても高い。血清アルブミンのスケールレンジを高い方向にずらしても、より高いたんぱく質栄養レベルのシニアほどからだの虚弱化が予防できていることがわかる。

栄養事象の重要性

 以上、紹介したこれらの研究データは、死や認知機能低下(認知症リスクも示すのかもしれない)、身体虚弱化など老化に伴う普遍的な健康リスクを取り上げている。個別の病気リスクを探索しようとした研究ではみられないたんぱく質栄養の本質を教えてくれる疫学データである。

熊谷修/博士(学術)、一般社団法人全国食支援活動協力会理事

熊谷修/博士(学術)、一般社団法人全国食支援活動協力会理事

1956年宮崎県生まれ。人間総合科学大学教授。学術博士。1979年東京農業大学卒業。地域住民の生活習慣病予防対策の研究・実践活動を経て、高齢社会の健康施策の開発のため東京都老人総合研究所(現東京都健康長寿医療センター研究所)へ。わが国最初の「老化を遅らせる食生活指針」を発表し、シニアの栄養改善の科学的意義を解明。介護予防のための栄養改善プログラムの第一人者である。東京都健康長寿医療センター研究所協力研究員、介護予防市町村モデル事業支援委員会委員を歴任

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