三菱自側は、ゴーン氏の提案に飛びついた。三菱グループ御三家の支援が、前回の経営危機の時のように期待できないこともあって、益子氏は日産の傘下入りを決断したという。短期間のうちに交渉がまとまったのは、三菱自がそれだけ切羽詰まっていたからである。

 日産は軽自動車の開発・生産を何度も検討したが、「単独で利益を出すのは難しい」との結論に達し、三菱自からOEM(相手先ブランド名製造)供給を受けている。自動車業界では、今回のトラブルは日産が軽自動車に自前で参入する最後のチャンスになるかもしれないと言われていた。

 霞が関では、5月に入って「ゴーン氏が三菱自の買収に強い関心を示している」との情報が駆け巡った。日産は三菱自の株式を1株468円で引き受ける。三菱自の株価は、偽装発覚前日の終値(864円)に比べて4割以上、安い。燃費偽装が発覚した翌日の4月21日から5月11日までの三菱自の株価や売買高を勘案して、日産は買い取り価格を468円に決めた。

 日産の傘下に入ることが決まり、株価は5月12日にはストップ高(80円高)の575円に急上昇した。10月19日午後にはゴーン氏の会長就任の情報が流れ、株価は急伸。一時52円高の536円をつけ、終値は522円(38円高)。日産は安い買い物をしたことになる。

 三菱自は10月19日、2017年3月期連結決算の純損益の赤字幅が、従来予想の1450億円から2400億円に拡大すると発表した。今後のリコールに備える費用を380億円積み増したほか、想定を超える円高や新興国景気の悪化に伴う減益を織り込んだ。燃費不正があった軽自動車を生産する水島製作所(岡山県倉敷市)の収益性が低下したとして、155億円の特別損失を計上している。
(文=編集部)

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