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筈井利人「一刀両断エコノミクス」

政府の経済政策は、経済を悪化させるという歴史的事実…不況期は「何もしない」が最善

文=筈井利人/経済ジャーナリスト
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 しかし、ニューディール政策が俗説と異なり、恐慌の解決に役立たなかったのと同じく、フーバーの介入政策はむしろ不況を悪化させ、労働者の4人に1人を失業に追いやった。

政治家にとっての不都合

 いつの時代も政治家というものは、政策の失敗を認めようとしない。フーバーは32年秋、不況が深刻になっていたにもかかわらず、演説でみずからの政策について次のように誇らしげに振り返った。

「何もしなければ、破滅していたでしょう。しかし私たちは困難に立ち向かい、米国史上もっとも大規模な、経済の防衛・反攻計画を民間企業と議会に提案し、実行に移しました。……経済危機に際し、これほど広い分野で指導力を発揮する責任があると考えた政府はそれまでありませんでした」

 この言葉からも、フーバーが自由放任主義と「小さな政府」を信じていたという俗説が嘘であることがわかるだろう。フーバーは逆に政府介入主義と「大きな政府」を信じていたのだ。そしてそれが不況を深刻な恐慌に悪化させた。

 しかしこの事実は、今の先進各国の政治家にとっては都合が悪い。大恐慌の犯人が経済介入だとすると、不況を口実にしてさまざまな経済対策を行い、有権者の人気取りをすることができなくなってしまうからだ。

 こうして「フーバーの自由放任が大恐慌の原因」という嘘は、今も消えることなく、政府に親しい学者やメディアによって世間にまき散らし続けられるのだ。
(文=筈井利人/経済ジャーナリスト)

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