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中村芳平「よくわかる外食戦争」

モスバーガー、あえて現場経験不足の新社長抜擢の秀逸戦略…世界進出本格始動へ

文=中村芳平/外食ジャーナリスト

 ひとまず大株主が推す人物が後継社長に就くのですが、混乱は収まりません。「モスは櫻田家でないと求心力が働かない」と、周りから推されて私が98年に社長に就きました。その時のゴタゴタがトラウマになっていて、私は創業者が急逝した60歳をメドに社長交代の準備を進めてきたのです。14年に社長と会長を兼務しましたが、今回の社長交代に向けた意思表明でした。

――後継社長に元常務取締役執行役員の中村栄輔氏を選んだ理由について、教えてください。

櫻田 一言で言えば、中村が私とは異質のタイプだったからです。中村は中央大学法学部卒業で、弁護士を志向した人物です。当社には88年、30歳の時に中途入社し、最初から本部勤務で法務部長、社長室長、店舗開発本部長、執行役員営業企画本部長、FC営業部門、モスフードサービス関西社長など、基幹部門の責任者を歴任。12年に国内モスバーガー事業営業本部長に就任してからは、国内モスバーガー事業を主導し、加盟店との連携、社内業務手法の改革、チェーン内の次世代人材の育成などに努めてきました。15年には原材料費、人件費の高騰による販売価格の改定、そしてFC本部として加盟店オーナーとの5年に1度の契約の再締結を無事行いました。

 中村に足りないのは現場の営業経験とステークホルダーとのコミュニュケーション力などですが、足りないところは私が補い、引き継げばよいと思っています。一方、中村は法律的な考え方に優れ、論理的で、表現力に恵まれています。中村は私にはない異質な能力を持っており、そこが中村を後継者に選んだ最大のポイントでした。

 というのも、当社はコンビニやライバル各社との競合が激化するなかで、過去5年で平均1~2%程度の成長率にとどまってきました。私とは異質な能力を持つ中村だったら、これまでの流れを変えて新しいモスをつくってくれるのではないかと思います。私は中村がリーダーシップを発揮できるように、全力でバックアップします。

――今後、代表権を持つ会長として国際本部を管掌しますが、どう取り組むお考えですか。

櫻田 モスバーガーブランドを「世界のブランド」に成長させることが長期経営目標です。そのためには出店可能店舗数の多い地域に、積極的に店舗展開します。また、現在店舗展開している国・地域の状況に応じた中長期的な成長戦略を描き、確実に推進したいと思っています。そして、食材、包装資材などの安定供給、調達コストの低減を目的に海外生産拠点などの供給体制を構築する考えです。1~2年で現状を把握し、どう手を打っていくか決めたいと思います。

中村芳平/外食ジャーナリスト

中村芳平/外食ジャーナリスト

●略歴:櫻田厚(さくらだ・あつし)

1951年、東京都大田区生まれ。高校2年生の時に父が急逝し大学進学を断念、アルバイトして家計を助ける。都立羽田高校卒業、広告代理店勤務。72年に14歳年上の叔父(モスフードサービス創業者・櫻田慧)に誘われ「モスバーガー」の創業に参画。フランチャィズ(FC)オーナーなどを経て、77年に同社入社。直営店勤務を経て教育・店舗開発、営業などを経験。90年、初代海外事業部長に就任、台湾の合弁事業の創業副社長として足掛け5年半でモスバーガーを13店舗展開。1985年の株式上場と244店舗展開(16年9月末)、そして同社の海外展開の基礎をつくった。慧氏は97年にくも膜下出血で急逝、享年60。櫻田氏は98年社長に就任、14年会長兼社長に就任し、今年6月、社長を常務取締役執行役員の中村栄輔氏(58)に譲った。社長交代は18年ぶりのことだ。櫻田氏は中村氏に国内事業、新規事業を任せ、海外事業に全力を注ぐ構えだ。「モスバーガー」を世界のブランドにするという、夢の実現に向かって挑戦しようとしている。

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