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日産、粛々と進む三菱自「完全支配」計画…ゴーン、仰天人事で「大いなる野望」完遂へ

文=河村靖史/ジャーナリスト
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サプライズ人事の背景

 そもそもゴーン氏は、燃費不正問題に対する責任をとっていない益子氏が続投することに対する周囲からの批判など意に介さず、こう言い切る。

三菱自の株主の利益のために(益子氏は)残るべき。いろいろ批判する人がいるかもしれないが株主ではない皆に納得してもらう必要はない。株主に納得されることが大切」(ゴーン氏)

 三菱自の筆頭株主は日産で、日産の最高権力者はゴーン氏。つまりゴーン氏は三菱自に対して独裁者として振る舞えるわけだ。

 さらに、日産は三菱自の経営を完全支配に向けた種も仕込む。三菱自の新しい経営体制では、日産のトレバー・マンCPO(チーフ・パフォーマンス・オフィサー)が三菱自のCOO(最高執行責任者)に就任する。三菱自の経営再建が軌道に乗り、次の中期経営計画の策定後、益子氏の後任としてマン氏が社長に昇格すれば、三菱自の経営はルノー日産グループに完全に取り込まれるわけだ。

 さらに、益子氏の続投と並ぶサプライズ人事が、日産の西川廣人CCO(チーフ・コンペティティブ・オフィサー)が同社の共同最高経営責任者へ就任することが内定したことだ。ゴーン氏はこの人事について「益子社長はサポートを求めており、これを支援して早く実績を出せるように力を注ぐ。私が不在のときに西川氏が多くの領域をカバーして決断してもらう」と説明する。

 西川氏の共同CEO就任は、日産の現役役員からも驚きの声が出ているが「日産の業績悪化の懸念に備えて人身御供を置いたのでは」(日産系サプライヤー)と解説する声がある。日産は主力市場である中国で苦戦している。市場全体の伸び率鈍化や、販売競争の激化で収益が厳しくなっている。中期経営計画「日産パワー88」に掲げた2016年度の営業利益率8%、グローバル市場での販売シェア8%の達成は実現困難だ。

 13年に日産の業績が悪化して業績の下方修正を繰り返した際には、当時COOだった志賀俊之氏を更迭、ゴーン氏自身は一切の責任をとらなかった。今回も日産の業績悪化に備えて西川氏を共同CEOにした可能性がある。

 ゴーン氏が将来グループ頂点に君臨するための動きとの見方もある。今回、三菱自との資本提携で、ルノー・日産グループのグローバルでの販売台数は約960万台(2015年実績)で、トヨタ自動車グループ、独フォルクスワーゲン(VW)グループ、米ゼネラルモーターズ(GM)グループに迫る世界トップ4の自動車メーカーグループになる。ゴーン氏は、ルノー、日産、三菱自などのグループ自動車メーカーを傘下に置く持株会社を設立し、そのトップに就任することを狙っていると予想する声がある。持株会社構想に備えて、西川氏を日産のトップに据えるための準備段階というわけだ。

 巨大自動車メーカーのトップに君臨するという野望に向けて突き進む、ゴーン氏の今後の動向から目が離せない。
(文=河村靖史/ジャーナリスト)

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