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宮永博史「世界一わかりやすいビジネスの教科書」

太陽光発電ブーム終焉でも参入、「草刈機まさお」などダジャレ商品名…ヘンな超優良企業

文=宮永博史/東京理科大学大学院MOT<技術経営>専攻教授

 筑水キャニコムの商品が農家に愛される理由は、名前だけではない。同社の開発部隊は実際に農家を訪問して丹念に要望を聞いている。しかも、すぐに試作品をつくり、要望を伝えてくれた農家にフィードバックする。たいていのメーカーが要望を聞いて聞きっぱなしにしてしまうのとは大違いだ。

 要望の聞き方も実に念が入っている。ビデオカメラで農家の要望を集める際にも、正式なインタビューが終わってほっとした瞬間を逃さない。そうした時に思わぬ本音が漏れたりするからだ。撮影したビデオは会社に持ち帰って再生し、多くの技術者たちと共有する。そうした地道な経営努力が同社の強みであろう。 

太陽光発電市場は成長市場?

 さて、筑水キャニコムが太陽光発電市場を成長市場と見立てて、メガソーラー(大規模太陽光発電所)に適した商品を開発したという。一体、どういうことだろう。
 
 話は14年頃に遡る。草刈り機まさおは、普通は果樹園で使われる機械だ。果樹園では定期的に除草をするため、雑草の高さがそれほど高くなることはない。ところが、メガソーラーを新たに建設する造成地では、果樹園ではありえないような高さの雑草を刈らなければならない。既存の草刈り機まさおでは力不足であった。

 メガソーラーが増えていくなかで、そうしたニーズをつかんだ筑水キャニコムは、早速、商品化を開始する。凹凸や障害物が多くても壊れにくい、草の密集度が高くても速く刈れる、ほこりが多くでもエンジントラブルを起こさない、ボタンひとつで高さを変えられる利便性など多くのメリットを盛り込んだ商品コンセプトを創造し、技術開発を行っていった。

 ようやく商品化の見通しがたち、15年9月には商品発表までこぎ着けた。ところがそこでトラブルが発生する。試作品を過酷な状況で稼働させたところ、なんと50時間ほどで動かなくなってしまったのだ。問題はモーターにあった。量産まで時間のないなかでモーターの選定からやり直し、なんとか16年春の量産に間に合わせることができた。そして今や予約待ちができるほど売れ行きは好調だという。

太陽光発電市場は成長市場?

 国内にはおよそ4000カ所(15年末時点)のメガソーラーが存在する。冒頭に述べた状況から、新たな設立は減るだろう。つまり造成のために草を刈る需要は減ることになる。しかし、既設のメガソーラーでも十分草刈り需要があるのだ。発電パネルに雑草がかかると晴れの日でも発電効率が低下する。雑草を除くために羊や山羊を使って試験している事業者もあるほどだ。筑水キャニコムは、そうしたメガソーラーの事業者にこの新商品をプロモーションしている。

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