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小林敬幸「ビジネスのホント」

ドゥテルテ比大統領、反米手法の落とし穴…米国の反発受け「死に体」韓国の二の舞いも

文=小林敬幸/『ビジネスの先が読めない時代に 自分の頭で判断する技術』著者

 世界の人々は、アメリカがよく言う自由と民主主義を素晴らしいと思っている。しかし、アメリカのエリート層(政治家、官僚、メディア、学者、金融関係者)が、自分の国に押しつけてくる「アメリカの民主主義」とその個別政策が嫌いなのだ。

 靖国神社参拝が日中間の大きな議論になった13年に、米国のケリー国務長官とヘーゲル国防長官が千鳥ヶ淵戦没者墓苑を花束を持って訪問した。間違いなく善意に基づいて、アーリントンに当たるのは靖国ではなく千鳥ヶ淵だというアピールだった。

 しかし、これをみた日本人には、左右どちらの意見を持つ者にも、自国内の意見を異にする者への反発とは種類の違う、もしかするとそれよりも強い不快感が生まれた。自分達の内心に土足で踏み込まれたような気色悪さと、上から目線の説教臭さと、ドヤ顔で「おれって、ソフトだろ」と善良ぶったアピールが鼻につく。

 このときの花束は小さなものであったが、あの調子でフィリピンなどに対して説教臭い要望をあれこれと突きつけていけば、民主主義的で民衆の感情に敏感なリーダーほど、嫌米方針になる。大衆がそれを自由な言論のもとでみていれば、嫌米政権の人気がいっそう上がる。

 米国内でも、テレビで人気を得てきたトランプ氏は、表現の自由と民主主義の申し子である。その大統領候補が、大統領選挙の不正を主張し、投票結果を認めない可能性も示している。これは、アメリカのエリート層がいう「アメリカの民主主義」を否定的に語ることで大衆の人気を得ようとしている点で、ドゥテルテ大統領と変わらない。

 このように今や、民主主義はアメリカを嫌う大衆世論を産み出しやすい。

嫌米方針の理由

 アメリカ人には申し訳ないが、どこの国でも大衆的人気を得るには、親米よりも嫌米のほうがいい。ちなみに、ロシアのプーチン大統領も、苦しい経済状況下でもアメリカと堂々渡り合って、国内の人気を上げている。ロシアでは表現の自由が制限されているから、プーチン大統領は民主主義国のリーダーとはいいがたいという批判もある。しかし今、ロシアで表現の自由を保障し完全に公正な選挙を行ったとしても、プーチン大統領への支持は、アメリカでクリントン氏、トランプ氏の両候補が大統領選挙で得られる支持より高いだろう。自国民に人気のないアメリカの新大統領が、プーチン大統領を民主主義に基づくリーダーではないと批判できるだろうか。

小林敬幸/『ふしぎな総合商社』著者

小林敬幸/『ふしぎな総合商社』著者

1962年生まれ。1986年東京大学法学部卒業後、2016年までの30年間、三井物産株式会社に勤務。「お台場の観覧車」、ライフネット生命保険の起業、リクルート社との資本業務提携などを担当。著書に『ビジネスをつくる仕事』(講談社現代新書)、『自分の頭で判断する技術』(角川書店)など。現在、日系大手メーカーに勤務しIoT領域における新規事業を担当。

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